アニメ監督・伊藤智彦氏が振り返る2015年のアニメ業界

2015年12月31日 10時00分


 ――「ノラガミ ARAGOTO」では戦闘シーンのBGMの一部にイスラム教のアザーン(礼拝の呼びかけ)が使用されていたことがイスラム教信者に問題視され、製作委員会が謝罪する騒動もありました

 伊藤:聞いたところによると、BGMを作るためにフリーの音源CDを使ったらしいんですが、そこにアザーンが入っていたようです。フリーの音源CDにはアザーンであるという但し書きはなく、制作者も意識せず使ってしまった。実は以前、ゲーム「ゼルダの伝説 時のオカリナ」でもアザーンをBGMに使用して修正したことがあったんですけど、その反省が生かされなかった…というようにも聞いています。また10数年後には繰り返してしまうことがあるので、こういうことがあったから事故が起きたと明文化しなければならないですね。

 ――声優は相変わらず2015年も人気でした。志望者も増えているそうですが、声優は育っていますか

 伊藤:育っていると思いますが、彼らに強い個性があるのかというと、それは別です。例えば20代付近でがたいのいいキャラの声をやれる男性が少ない。どうしても、なよっとした感じのイケメン声が多いんです。アニメ「アルスラーン戦記」のダリューンをやった細谷(佳正)さんくらいじゃないでしょうか。それより下の世代にはいない感じがします。

 ――昨年も男性の演じるキャラは相変わらずイケメン役が多くて、役に幅がないと言及されていました

 伊藤:それでいうと「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」はデブがいるし、ヤンキーな感じで、こびてない姿勢はいいなと思います。

 ――2015年は動画配信サービス「ネットフリックス」も上陸。「amazonプライム・ビデオ」もスタートし、動画配信が本格化しています。海外では「ハウス・オブ・カード」など莫大な資金をかけたドラマは成功しています。動画配信会社はコンテンツを求めており、今後こうした資金が日本のアニメ業界にも入ってくることが予想されます

 伊藤:入ってくるかもしれませんが、潤沢な資金とアニメ業界の食い合わせがあまりよくないという説があるんですよ。お金があったからといってちゃんと作品が出来上がるかというと、そうでもない。潤沢な資金があることに慣れているアニメ業界の方は、結局お金を食いつぶす傾向にある。昔のスクウェア・エニックスが映画「ファイナル・ファンタジー」で失敗しましたけど、あれはハワイにスタジオを設立して、スタッフが遊んじゃったからだめなんです。アニメはどっかに隔離して作らないと無理ですね。八ヶ岳の山荘に演出と作画チームを閉じ込めて、作品作りが終わるまで帰さない。その代わり夜は毎日宴会をする。そんな感じが今までの日本のアニメのやり方で、システマチックなやり方と食い合わせが悪いのではないかと思ってます。ひょっとすると、京アニさんとかPAワークスさんは別なのかもしれませんが。ネットフリックスが手を組んでいるのはポリゴン・ピクチュアズ(3DCG制作会社)さんですけども、それは彼らの作る3Dはシステマチックに作らなければならないからですよ。