出版取次大手などが発表した今年の年間ベストセラー総合1位は、お笑いコンビ「ピース」又吉直樹(35)の芥川賞受賞小説「火花」だが、その映像化に問題点が指摘されている。ピースが所属する吉本興業は、ダントツの売り上げの勢いを駆って、ドラマと映画化を即決定。どちらもヒット間違いなしと思われるだろうが、ドラマの配信方式、映画の監督をめぐって「本当に大丈夫なのか?」と、不安視する声が上がっているという。そのわけは――。

 累計発行部数240万部に達した「火花」が7月、芥川賞に選ばれた直後のことだ。吉本興業はドラマ化と映画化をいち早く決定。その後、ドラマ版の監督、主要キャストが10月に発表された。

「林遣都に波岡一喜、ヒロインの門脇麦らが中心です。全10話の総監督は『余命1ヶ月の花嫁』などを手掛けた廣木隆一氏が務める。すでに撮影は終盤に入ってます。1月下旬から、インターネット映像配信サービス『ネットフリックス』で配信される予定です」と吉本関係者が言うとおり、既存の地上波テレビではなく、ネット配信を選んだ形だ。

 米国で4000万人以上の顧客を抱える動画配信大手の「ネットフリックス」は今年9月から日本でのサービスを始め、フジテレビと組んだドラマ「テラスハウス」や、桐谷美玲(25)主演のオリジナルドラマ「アンダーウェア」などの配信でも知られる。

 その同社が、社会的な関心も呼んだ「火花」の映像化作を独占配信。この成り行きに、キー局ドラマ関係者は「当初、フジテレビがドラマ化に名乗りを上げたんですが、吉本はネットフリックスとタッグを組む道を選んだ。この会社は全世界に会員を持っているため、世界的にヒットする可能性がありますが、実際はドラマの制作費を安く抑えることで利益を上げているネット配信会社でしかない。果たして、そんな安い制作費で良い作品が作れるのか、疑問ですよ」と批判的な見方を示す。

 一方、映画化については、吉本内で監督を誰にするかでゴタゴタがあったという。

「当初は映画『ドロップ』や『漫才ギャング』などがヒットしたお笑いコンビ『品川庄司』の品川祐が監督の最有力候補に挙がっていたんです。品川の作品は興行的にも吉本に利益をもたらしている。それだけに品川で決まりだと思っていたら、何と監督は板尾創路に決まったのです。大丈夫かなと思いましたよ」(映画関係者)

 お笑い芸人の板尾は、シリアスな演技力の役者としても活躍。一方で、自らも映画監督を務めたこともあるのだが…。

「板尾がメガホンを取ったのは2010年の『板尾創路の脱獄王』と12年の『月光ノ仮面』の2本です。しかし、残念ながらいずれも大コケでした。文学作品だけに品川よりも板尾という判断なのかもしれませんが、監督として実績のない板尾にヒット作品が作れるか、疑問ですよ」と吉本関係者もみている。

 240万部が日本中にあふれた「火花」だけに、映像化となれば、その数以上の人々が興味を持つのは確実。ただ、ドラマは地上波でなく有料ネット配信、映画は実績のない芸人監督となれば、どうなるか。吉本興業の新しい試みが吉と出るか、凶と出るか。