「ゲゲゲの鬼太郎」などで有名な漫画家の水木しげるさんが先月30日に亡くなったことを受けて、地元の住民有志が東京・調布に“水木しげるロード”を造ろうと活動している。水木さんは11月11日に自宅で転倒し入院。一時回復した様子も見せていたが帰らぬ人となった。近所住民の有志で作られた「ゲゲゲ友の会」の今野雄二会長(79)は水木さんの等身大の銅像を調布駅前に作ることを夢見ていた。さらに、調布駅から深大寺を結ぶ道に、妖怪の像を建てるプランを明かした。

 午後6時35分ごろ、車から白い布に包まれた水木さんの遺体が東京・調布市内の自宅に運び込まれた。無言の帰宅に室内からは女性のすすり泣きが漏れ聞こえてきた。長女の原口尚子さんによると、11日に転倒して入院。一時回復して、「大丈夫かな」と思っていたら、30日未明に容体が悪化したという。死因は多臓器不全だった。

 水木さんは調布に仕事場も構え、市民に親しまれていた。それだけに地元民の悲しみは深い。「ゲゲゲ友の会」の今野会長もその一人だ。同会はNHKの朝ドラ「ゲゲゲの女房」(2010年3月~9月)が放送終了したことを受けて、「このまま終わるのはもったいない」と今野会長ら有志が集まり結成した。水木さんの公認もちゃんとある。

「11月26日に調布市の産業(振興)課を訪ねたんです。水木さんは高齢だし、2020年にはオリンピックも控えている。調布を世界に売り出すためにも水木さんの等身大の銅像を建てるべきだと話しました。産業課の担当者も『努力します。市でもいろいろ考えています』と言っていました。なんとか生前に実現できればよかったのですが」

 亡くなったとはいえ、銅像の話は続いている。京王線調布駅は近年、地下化され、駅前の再開発が進んでいる。「渋谷駅のハチ公みたいに調布駅前に水木さんの銅像を建てる。鬼太郎のブロンズ像も横に置きたい。さらに、(調布市内の)深大寺に鬼太郎茶屋があるでしょう。駅からそこまでをつなぎたい。道には妖怪を並べます」(今野会長)

 水木さんが育った鳥取県境港市には「水木しげるロード」があり、たくさんの妖怪の像が並ぶ。

 今や有名な観光スポットになっており、毎年多くの観光客が訪れている。まさにその調布版を造ろうというのだ。「いつか水木しげる記念館も建てたい。会には全国で70人ほどのメンバーがいます」(同)。会長は本気だ。

 水木さんも調布に骨をうずめる覚悟だった。自宅近くの寺にはすでに墓が生前から用意されていた。妖怪に囲まれた水木さんらしい墓だという。近所の男性は「ご両親が亡くなられたときにそのお寺でお葬式をしました。その後に自分のお墓も作ったんです」と話す。

 近所の主婦によると水木さんは1955~65年ごろに今住んでいる場所に引っ越してきた。「平屋の家に1人で来て、その後、奥さんが来ました。ゲゲゲの鬼太郎がヒットしたときは子供たちがサインを求めに来て、水木さんもお菓子を配ったりしてたんですよ。朝ドラのときも九州から若い男性が訪れたりしていました」(近所の主婦)

 もともと寡黙な人柄で、近所付き合いもあいさつ程度だった。自宅と仕事場を徒歩や自転車で通っていた時期もあったが、最近は姿を見かけることが少なくなっていたという。代わりに近所付き合いをしていた妻の布枝さん(83)はこの日、自宅前で「(最期の)会話はできませんでした。アイコンタクトはできました」と悲しみの表情で語った。

 近所の住民の間では「いつか水木さんが妖怪として街を歩いているかも」とささやかれているが、銅像も建つ。