講談界に24年ぶり男真打ち誕生

2012年10月17日 16時00分

 張り扇で釈台を叩き、口滑らかに歴史物語から現代世相までを語り尽くす講談の世界が、24年ぶりの男性真打ち誕生に沸いている。1日付で昇進した田辺凌鶴(45)の真打ち披露興行が今月末まで都内で続き、講談界はお祭りムードだ。

「講談の面白さはもっと注目されていい。自分自身も大きくなり、マスコミにも取り上げられるようにならなければ。真打ちはその通過点でもある。女性が増えて観客層も広がった。そういうプラス部分も刺激になる」

 2000年の入門から12年での真打ちに、凌鶴は責任をひしひしと感じる。講談協会のウェブサイトにある会員一覧によると、講談師は男性が17人で女性は22人。在籍する真打ちで男性は1988年の田辺南北(63)が直近だったが、ようやく凌鶴が新たに名を連ねた。この間、女性真打ちは何人も生まれている。

 この状況を、講談協会会長の人間国宝・一龍斎貞水(73)は「楽屋が女性に占領されて我々はおどおどしている。高座に上がるとホッとする」と13日の披露興行で自虐ネタ的にまくらにした。

「紅一点」ではなく「紅」が多数を占める講談界で久々の男性真打ち誕生は、別の講談師いわく「松ともみじがいっぺんに咲いた感じ」の慶事。
 凌鶴は「この仕事は辞めなかった人が残る。非常に厳しい世界。男性の場合、家庭ができて稼がなければならなくなると、辞めていく人もいる。私はたまたま、かみさんも稼いでいる。これからは、サラリーマンでは難しいぐらいの稼ぎをしたい」と語った。

 長いひげや「東京オリンピック」などの新作落語で幅広い人気を誇った故田辺一鶴の下で修業を積んだ。自身も100を超す新作を作り、本紙も過去に報じた「死刑と裁判員制度」は、中央大法学部卒の学歴とともに話題になった。

 09年に死去した一鶴師匠には、心の中で報告をしていない。真打ちになっただけではまだ早い。より大きな存在になった時に初めて、昇進を伝えるつもりだ。