先月下旬、ハロウィーンに沸く米マサチューセッツ州セイラムで“魔女”が“魔法使い”を訴えるという摩訶不思議な裁判が行われていた。

 原告の“魔女”はロリ・ブルーノ氏(75)。ブルーノ氏が3年にわたって嫌がらせを受けたとして裁判所に訴えた相手が“世界で最も有名な魔法使い”を自称するクリスチャン・デイ氏(45)だ。

 セイラムは魔女狩りが行われた地として知られ、特にハロウィーンシーズンには世界中から観光客が訪れる「魔女の街」。この時期は魔術師たちにとって一番の書き入れ時となる。実際、デイ氏のSNSにはハロウィーンの夜に行われるクラブイベントやディナーショーの告知が満載だ。

“魔法使い”が“魔女”にどんな嫌がらせをしたのか? ブルーノ氏は「3年間にわたって深夜に罵倒する電話がかかってきたり、SNSで悪意ある書き込みをされて商売に悪影響が出た」と被害を訴えている。嫌がらせの次元は人間とそう差異はないようだ。

 デイ氏とブルーノ氏はかつてテレビ番組で、ゲスト俳優に癒やしの儀式を行うなどして共演した仲。だが、ともに魔法グッズショップを経営するなど商売敵でもあった。裁判所は「デイ氏からの深夜の電話の数には驚きを隠せない」として被害を認定し、ブルーノ氏の保護申請を受理した。

 世界の“魔女”事情を見ると英国やルーマニアなどの一部でひっそり魔女は現存しているようだ。ルーマニアでは魔女は「許可制」で自営業者扱い。大体、まじないや相談員、パワーストーンなどの呪術グッズ販売などで生計を立てている魔女が多いという。代々、イタリア・シチリア島の預言者の家柄だというブルーノ氏も魔法ショップが主な収入源だったようだが、この“魔女裁判”はどうなることやら。