炎のロックンローラーならぬとんでもない放火ゲリラだった!? 東京都内のJR施設で不審火が相次いだ事件で警視庁捜査1課は15日、品川変電所でボヤを起こしたとして威力業務妨害の疑いで、東京都武蔵野市の自称ミュージシャン野田伊佐也(いざや)容疑者(42)を逮捕した。ロックバンドのメンバーだった野田容疑者は反体制の詞を歌うだけでは飽き足らず、JRの施設に火をつけまくった疑いもありそうだ。しかも、ネットにもその“異常性”が表れていた。

 逮捕容疑は8月23日午後7時半ごろ、品川区広町1丁目にあるJR東日本の変電所の高圧ケーブルに何らかの方法で火を付け、同社社員に緊急対応などの対策を取らせるなどして業務を妨げた疑い。「やったことはやったが、業務妨害になるとは思っていない」と供述している。

 8月以降、北区や品川区などで線路脇のケーブルが焼けるなど放火の疑いがある7件の不審火が発覚。今回の容疑はその1つで、捜査1課はほかにも野田容疑者が関与した可能性もあるとみて調べる。

 捜査関係者によると、逮捕容疑事件が起きた現場周辺にある防犯カメラには、黄色のテンガロンハットをかぶって自転車で走り去る男の姿が写っており、火の付いた物を投げ込む男の姿も目撃されていた。捜査1課は野田容疑者の自宅を家宅捜索し、同じものとみられる帽子や自転車を押収した。

 所属しているとみられるロックバンドを紹介するインターネットのサイトでは「イスラエルと日本のハーフ」と紹介されている。「ゲリラ」という曲の作詞を手がけていた。

「改善、政府の再編成。社会の民主主義は再生されなければいけない。帝国主義を撃退しろ! 民族主義者を分裂させろ! あの独裁者を認めてはいけないことを民衆に納得させろ! 自治権を取り戻すんだ」などという歌詞だ。ほかにも「燃やせ!燃やせ!燃やせ!」といったフレーズがある。

 自宅アパート近くの男性は「夜遅くや朝早く、部屋からロックが聞こえてきた」と話す。

 容疑者の写真共有アプリ「インスタグラム」には、自分自身の写真と歌手のコラージュ画像のほか、JRの路線図や電車の写真が執拗にアップされている。“極左ミュージシャン”が日本を混乱に陥れるために、インフラを破壊しようとしたのだろうか。だが、その代償は大きい。一連の不審火が野田容疑者の犯行と判明すれば、威力業務妨害罪に問われるだけでなく、JR東日本から巨額の損害賠償を請求されるのは必至だ。

 8月22日の中央線東中野でのケーブル火災では約1時間15分、運転停止となり、約2万5000人が巻き込まれた。5日後の同月27日午後1時の山手線恵比寿―目黒間の線路脇ケーブルの火災でも山手線、埼京線、湘南新宿ラインが約1時間運転見合わせとなり、約5万1000人に影響が及んだ。

 警察関係者は「首都圏の大動脈であるインフラを停止させ、少なく見積もってもJR東日本から民事で億単位の損害賠償請求となる。刑事罰が確定すれば負けます。執拗にJRの設備を狙っており、犯人は巨額賠償金となるリスクも当然分かっていたはずですが、放火の快楽が勝ったのか」と話す。

 執拗にJRばかりを狙ったとみられる放火魔。野田容疑者の関与については今後の調べを待つことになるが、その胸中ではどんな炎が燃え盛っていたのか。