それでもいばらの道を進むしかないのか!? 関西テレビ(カンテレ=フジテレビ系列)は14日、大阪市内の同局内で10月改編会見を開き、“21世紀最低視聴率”も記録して終わった連続ドラマ「HEAT」の反省点を編成局長が語った。同ドラマは続編となる映画の製作も決まっているが、このままでは大赤字は確実な状況だ。にもかかわらず映画化をやめられない複雑な事情があった。それは――。

 1日に終了した「HEAT」は、7月クールの火曜午後10時から放送されていたカンテレ制作のドラマ。

 EXILEのAKIRA(34)が演じる不動産会社のエリート社員が、素性を隠して街の消防団に入り込むというストーリーだった。

 ところが、視聴率は全く振るわず、8月11日の第6話は2・8%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)。テレビ東京を除く民放のゴールデン、プライム帯の連続ドラマで今世紀最低の数字が出てしまった。その後も低空飛行を続け、最終回の視聴率も3・9%(同)の大惨敗となった。

 カンテレの大澤徹也編成局長は「実力のある、またはフレッシュな役者さん、力のある脚本家の方にお集まりいただいたんですけど、関西テレビの企画の方向性が大きく間違っていた」と“敗因”を分析。当初、ハードボイルド路線も検討されたが、最終的に身近な人情話をベースにしたという。

「AKIRAさんの持つイメージを裏切りつつ、そこに勝機を見いだしたかった。しかし、視聴者の方々が求めていたのは、そうではなかった。ハードなタッチでやるべきではなかったかと…」(大澤局長)

 気になるのは続編となる映画の存在だ。放送前から来年春公開予定の映画「DRAGON(仮題)」が決定していた。7月の時点では「HEAT」と同じくAKIRA演じる池上タツヤが主人公で、東日本大震災を教訓に総務省消防庁が実際に新設したエネルギー・産業基盤災害即応部隊(通称ドラゴンハイパー・コマンドユニット)を舞台に、石油コンビナートなどでの火災や爆発に立ち向かう設定になっていた。

 在阪テレビ局関係者は「消防庁や出版社と手を組んだ一大プロジェクト。AKIRAにも映画の話込みでオファーしているから簡単に映画化は中止できない」と事情を説明。

 メディアミックスの小説も出版されており、カンテレとしては映画化だけでも成功させたいが、道は険しい。

「ドラマがあの状況では小説はおろか映画もヒットするとは思えない。“プロジェクトの集大成”と銘打っているが、尻すぼみになる可能性が高い。カンテレとしては行くも地獄、戻るも地獄のような状況でしょうね」と窮地に陥っているカンテレの苦境を語る。

「一部ではAKIRAを代えればなんて話もあるようですが、この手の話はスポンサー筋にも、主演のキャストから主題歌まですべて込み込みで進んでいるもの。赤字が見えているからといってやめるには莫大な違約金もかかるし、もう進むしかない。まあ、公開館数を予定より大幅に減らし、ダメージを軽減させて、何とかDVDで回収するっていう消極策しかないでしょうね」とはある映画関係者。

 秋クールでは10月20日から松坂桃李(26)主演の「サイレーン 刑事×彼女×完全悪女」(火曜午後10時、初回のみ午後9時から2時間スペシャル)がスタートする。同タイトルのマンガが原作で、ドラマオリジナルの設定や結末を加えたクライム・ラブサスペンスとなる。

 大澤局長は「私自身も楽しみなドラマになっている」と語っていたが、「HEAT」の二の舞いだけは避けたいのが本音だろう。