池上彰氏の特番が増えるトホホな事情

2015年07月08日 06時00分

5日にテレビ東京で特番の収録を行った池上彰氏

 人気キャスター・池上彰氏(64)がメーン司会を務める特番が、民放各局で相変わらず増えている。硬派な話題にバッサリと切り込む池上氏の姿勢が視聴者の絶大な支持を得ているわけだが、どうやらそれだけではなさそう。背景には、テレビ業界の何ともトホホな事情が…。自局の記者やキャスターが、番組内で危険な発言をして批判を浴びることを恐れ、池上氏に頼らざるを得ないというから情けない――。

 池上氏は先週末、テレビ東京系特別番組「池上彰の教科書に載っていない20世紀~あの『言葉』が世界を変えた!?~」(26日放送)の収録と会見を同局で行った。

 この場で、自民党議員の「メディアを懲らしめる」との発言について「民主主義の基本においてありえないこと!」と断罪した。
 その一方で「第1次世界大戦から第2次大戦にかけて、国民が熱狂するとそこに乗っかって部数や視聴者を増やし、あおり立てることによって、国民がさらに熱狂していった。極めて残念なことだが、ネガフィルムとして、そこはとらえていかなければいけない」と、メディアにとっての負の歴史を冷静に見直すことの重要性も指摘した。

 客観的な立場からのリベラルな発言や追及を繰り返す池上氏は、NHKを退職した2005年以降、民放各局への露出を増やし続けている。

 2011年の初頭には“テレビから引退する”との意向を示したものの、直後に東日本大震災が発生。震災や原発の問題を分かりやすく解説できるのは「池上氏しかいない」と再び引っ張りダコとなり、結局は引退することなくその後も精力的にテレビ出演している。

 最近も池上氏へのオファーは増える一方だ。レギュラー番組である「池上彰のニュースそうだったのか!!」(テレビ朝日系)だけでなく、数多くの特別番組に出演しまくっている。

 今月4日には同番組の2時間スペシャルが、先月5日には「池上彰緊急スペシャル!」(フジテレビ系)が放送された。

 さらに8月4日には日本テレビ系で「戦後70年特別番組 櫻井翔&池上彰 教科書で学べない戦争」が放送される。

 局を問わず、毎月のように流れる「池上特番」。もちろん池上氏が他に代えの利かない人物なのは当然だが、それでも、ここまで“池上頼み”になってしまうのはなぜなのか?

「確かに『社会情勢を解説するなら各局の記者やキャスターがメーンを張ってやるべきではないか』というのは、もっともな意見だと思う。ただ民放各局とも報道部の人員不足に加え、報道部と情報バラエティー制作班の連携不足があって、自局のスタッフで番組を作れなくなっている」(制作会社関係者)

 さらに問題なのは、自社の記者やキャスターをメーンに起用すると、番組で主張する内容が「局の意向」と取られてしまうこと。その主張を前面に打ち出したら、その意見を受け入れない視聴者の反発を呼んでしまうというのだ。その点、池上氏をキャスターに起用しておけば、危険な発言をしても、あくまで責任は池上氏にある。

「過去にはテレビ東京の選挙特番で、公明党に創価学会との関係を質問したように、タブーなしの姿勢が絶大な支持のもとになっている。自社の記者がそんなことをしたら“取材拒否”になりかねないが、池上氏の発言なら不問にされるから…」(同)

 ちなみにフジの「池上彰緊急スペシャル!」では、韓国人へのインタビューで誤ったテロップを流す失態があった。

「でも池上さんには全く関係ないミス。番組自体は池上さんに頼りきってるのに、細かい編集の部分で足を引っ張るのは、勢いのないフジらしいけど(笑い)」(同)

 各テレビ局の“弱腰の姿勢”が、池上氏の特番が増える最大の要因のようだ。