集団的自衛権の行使容認などを盛り込んだ安全保障関連法案が26日、衆議院本会議で審議入りした。野党側が「戦争法案だ」と厳しく追及する一方、安倍晋三首相(60)は「政治家は平和を願うだけでなく、果敢に行動していかなければならない」と鼻息が荒い。与野党激突の裏で同日、参院議員会館で超党派による「禁演落語を聞く会」が催された。

 禁演落語とは、第2次世界大戦中にふさわしくないとして演じるのを禁じられた「53の演目」のこと。国家によって禁じられたのではなく、当時の落語関係者たちの自主規制によるものだった。吉原を舞台にした廓(くるわ)ばなしや、妾や間男が題材となったものが戦意高揚につながらないとして禁じられた。

 平和を見つめ直す機会にしようという趣旨で、社民党の福島みずほ参院議員(59)が落語家の林家たい平(50)を口説き、会が実現。自民党から共産党まで超党派の落語好き議員が呼びかけ人に集まった。

「53の演目」からたい平が選んだのは「お見立て」。吉原の遊郭にいる花魁(おいらん)のもとに気に入らない客がやって来た。花魁は今でいう男性店員に「風邪で寝込んでいるから会えない」とうそをつくよう頼む。しかし客は引き下がらず、しまいには「花魁は死んだ」といううそにまで発展し、客を墓参りに案内することになってしまうというもの。

 たい平の巧みな話しぶりとアレンジで会場は沸いた。「吉原が舞台というだけでひとくくりにされて自主規制になった恐ろしさがある。楽しい落語を聴いて、今は平和だなあと思ってお帰りいただけたら」(たい平)。

 安倍首相も笑えるはずだ。