放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会は20日、やらせ疑惑を指摘されたNHKの報道番組「クローズアップ現代」などについて審理入りしたことを発表した。
対象となったのは昨年5月14日に放送された「追跡“出家詐欺”~狙われる宗教法人~」。多重債務者を出家させて戸籍の下の名前を変えて別人に仕立て上げ、金融機関から多額のローンをだまし取る詐欺の実態を伝えた。
この放送に対し、番組内で詐欺に加担する「ブローカー」として紹介された男性が今年4月、「自分はブローカーではない」として、同委員会に人権侵害などを訴える申立書を提出した。
番組では匿名で音声も加工され、顔にボカシも入っていたが、男性は「ブローカーをした経験もなく、自分がブローカーであると言ったこともない」とした上で、「手の形や手の動き、しゃべり方に特徴があり、(自分を)よく知る人物からは映像中のブローカーが(自分であると)簡単に特定できてしまうものであった」と主張。
その結果、父親や友人らから「お前ブローカーなんてやっているのか!」と叱責されたといい、NHKに訂正放送を求めている。
これに対し、NHKは「十分な裏付けのないまま、番組で男性を『ブローカー』と断定的に伝えたことは適切ではなかった」としつつも、「インタビューの中で、仲介する寺や住職の見つけ方、勧誘の仕方、多重債務者を説得する際の言葉の使い方を詳しく語るなど、ブローカーと信じるに足る要素が多くあった」と反論。
さらに、映像と音声については「厳重に加工した上で放送に使用」したとしており、視聴者が男性を特定するのは「極めて難しく、本件番組は、申立人の人権を侵害するものではない」としている。
同番組をめぐっては、BPOの放送倫理検証委員会が放送人権委員会とは別に、すでに審理を始めている。