NHKの看板番組「クローズアップ現代」に出演し、やらせ行為に加担させられたとする大阪府内在住で飲食店経営の男性A氏(50)が21日、放送倫理・番組向上機構(BPO)に人権侵害を申し立て、大阪市内で代理人とともに会見した。

 問題があったとされる番組は、昨年5月14日の「クローズアップ現代」で放送された「追跡〝出家詐欺〟~狙われる宗教法人~」。内容はブローカーを介した多重債務者が出家して名前を変えることで、融資などをだまし取る手口を紹介するというもので、A氏はブローカーとして出演させられたと主張している。

 今月1日に会見を行い、自身がブローカーでないと主張したA氏は、知人男性B氏に依頼され、再現映像だと思って撮影に協力。ブローカーとして出演するとは思っていなかったという。

 A氏の代理人は訂正放送についての回答期限を15日としていたが、NHK側からの明確な返答がなかったことから、この日ファクスでBPOへ申し立てを行った。

 A氏は1日に続き、13日にもNHK側からのヒアリングを受けたが、NHKはブローカーである証拠の明示をせず、取材した記者の証言の裏付け作業ばかりだったという。

 A氏は「NHKという組織は自浄能力がゼロで全くないんだなと思いました」と残念そうに語り、「公共放送として、キチッとした調査をしていただけると思っていたが、身内の主張の裏付けを取りたいようなヒアリングだった。本当に調べる気はあるのか」と憤った。

 また、2回目のヒアリングを行った翌日(14日)には、今回問題となっている記者の上司にあたるNHK大阪放送局の坂本忠宣局長が、25日付人事でNHK理事に就任することが発表された。

 これに対しA氏は「ふざけるなと。そのひと言です」と怒りを隠さず、「その人事をしたいがために(調査を)引き伸ばしたのかと思った。よく国会でやる牛歩戦術ですか、チンタラチンタラとやる気があるのか。だから、NHKは自浄能力がないんですね」とボロクソだった。

 撮影された部屋の持ち主も3日に会見して「部屋でブローカー行為はしていない」と話し、B氏が勝手に使用したことを証言していたが、A氏は「私にとってはありがたいですね」と感謝した。

 また、BPOに対してA氏は「第三者としてキチッと適正な調査をしていただけるといいなと思います」と期待を寄せた。