命を救ったのは「経験と技術と強運」だった――。ハリウッドのカリスマ的俳優ハリソン・フォード(72)が操縦する小型機が5日午後、カリフォルニア州ロサンゼルス上空でエンジントラブルに遭い、近くのゴルフ場にあわや墜落寸前で不時着したニュースは本紙昨報通り、世界を驚かせた。重傷を負いながら九死に一生を得たハリソン。専門家は「50年以上の飛行歴と高い操縦技術があったから」と断言。そんなハリソンは、過去にパイロットとして2度も人命救助をしていたことも明らかになった。

 米メディアによると、緊急着陸したのは第2次世界大戦中の米陸軍訓練用戦闘機「ライアンPT―22リクルート」。2人乗りで、ビンテージもののコレクターアイテム。事故当時、ハリソンは1人で操縦していた。


 同機が不時着した同市ベニス地区にあるペンマーゴルフ場にいた目撃者によると「真っ逆さまに墜落するかのように8番ホールに向かって落ちてきた」と証言。なんとか水平に近い状態になった後、芝生の上に不時着。近くにいたゴルファーら4~5人が駆け寄り、火災を恐れてハリソンをすぐさまコックピットから引きずり出した。


 ハリソンの広報担当者は「重傷を負ったが命に別条はない。全快できる見込み」との声明を発表した。


 航空当局の専門家は「近くには住宅が密集しており、ゴルフ場に緊急着陸させたのは適切な判断。経験と腕のなせるわざだった」とハリソンの操縦技術をたたえた。実際、ハリソンが趣味で飛行を始めたのは1960年代。つまり飛行歴50年以上の超ベテランパイロットだったのだ。


 また、米芸能サイト「TMZ」によると、同コースには偶然、医師2人がプレー中で、救急隊が到着する前に止血などの応急手当てを施した。ハリソンは頭部に深い傷を負い、出血がひどい状態だったという。もし医師が居合わせなかったら、より危険な状況だっただろう。なんとも強運な偶然だ。


 実はハリソン、小型機のみならずヘリコプター免許も取得していた。広大な土地に自宅があるワイオミング州ジャクソンにプライベートヘリ「ベル407」を所有している。そのヘリでこれまで2度、当局からの依頼を受けて、山で遭難したハイカーの救助活動に貢献していたのだ。


 2001年には、同州など3州にまたがるイエローストーン国立公園で遭難した13歳のボーイスカウトの捜索に協力し、少年を無事発見した。またその前年には、同州で山登りに出かけた20歳の女性が山頂で疲労困ぱいのため動けなくなり、当局から連絡を受けたハリソンがヘリで救助している。


 救助された女性はヘリに乗った直後、吐き気をもよおし、ハリソンが差し出したカウボーイハットの中に嘔吐。女性は後に「まさか助けてくれたのがハリソン・フォードだったなんて、本当にびっくり。なのに、ハリソンの帽子に吐いてしまうなんて、すごく恥ずかしい」と語っていた。


 世界的な大スターなのだから、そもそも強運は持っていて当たり前。ただ、今回の事故で偶然、医師が居合わせ適切な応急処置をして命を救ってくれたのは、「過去の救命活動が自分の身に幸運をもたらしたのだろう」との声が出ているのもうなずける。


 さすがハリソン。実生活でも英雄、まさに“ハン・ソロ”だった。