【ビートたけし審査委員長の総括】東京スポーツ映画大賞が24回目か。よく続いたもんだね。最初は渋谷のビデオスタジオで授賞式をやって、新人賞に北林谷栄さんを選んで、絶対に式に来ないだろうと思っていたら、本当に来てしまって、どう扱っていいか分からなくなったことがあったな。それで、2~3回ぐらいシャレでやって終わるんだろうっていう感じだったんだけど、東京スポーツさんもオレも、意地でもやってやろうってことで、ここまで続いた。

 それを押し通して24回もやってきたことをうれしく思うし、それを支えてくれたのがノミネートを選んでくれる全国の映画祭のディレクターたちだ。

 あと本来なら、今回は高倉健さん、菅原文太さんの追悼をやるべきなんだろうけど、2人とも「オレはいいんだよ」って人柄だからね。その2人に功労賞とか賞をあげるのは失礼になると思うんで、やめておいた。

 映画ってのは、ほとんどデジタルで、フィルムで撮る監督がもういなくなった。それが世の流れでしょうがないと思うんだけど、今日選ばれた監督賞とか主演女優賞の映画ってのは、やっぱり映画芸術をしょって立ってるもので、エンターテインメントの中でも、ちょっと考えさせるような映像美だった。

 でも、どうしても片っぽでは、映画界はちっちゃな子供と親が楽しめるディズニーランド的な映画が席巻するという状況だね。

 それから、今の高校生は一日に7時間以上もスマートフォンをいじっているという時代に、映像というのが果たして、どれだけの感動と知性とかを伝えられるものなのか。単なるデジタルの文字を読むだけで、世の中が分かった気になる時代なんだけど、我々も、もうちょっと頑張って奥深い映画という、芸術、アートという部分でのエンターテインメントをもう一回盛り上げていきたいね。

 来年も、ちゃんといい作品が出て、今日みたいに東スポ映画大賞が盛り上がればうれしいね。