「第38回日本アカデミー賞」(2月27日授賞式)の優秀賞発表記者会見が14日に都内で開かれ、日本アカデミー賞協会会長の東映・岡田裕介代表取締役会長(65)が北野武監督(67=ビートたけし)に対し“異例の反論”を行った。北野監督は昨年10月に開催された「第27回東京国際映画祭(TIFF)」でのトークショーで、若手映画監督らを前に日本アカデミー賞批判を展開。当時の発言について、岡田会長は「誤解がある」と言うのだが…。

 北野監督はTIFFでのトークショーで「一番ひどいのは(日本)アカデミー賞。(米国で開催される)アカデミー賞の日本代表(作品)は(日本)アカデミー賞で推薦された作品しかノミネートされない。自分の映画がアカデミー賞に推薦されたことは1回もない。最優秀賞も松竹、東宝、東映、たまに日活。大手以外の作品が取ったことはほとんどない。全部持ち回り」とバッサリ。

 続けて「誰が選ぶといえば(日本)アカデミー賞の会員が選ぶんだって。アカデミー賞の会員なんていない。汚いことばっかやっているから日本の映画がダメになる。それに声を上げないメディアもダメ」と“毒ガス噴射”で会場の笑いを誘っていた。実際に今年の優秀作品賞に選ばれた5作品も東宝2(「永遠の0」「蜩ノ記」)、松竹2(「紙の月」「小さいおうち」)、東映1(「ふしぎな岬の物語」)という内訳だ。

 これに対し岡田会長は「米国で開催されるアカデミー賞の日本代表作品は日本アカデミー協会でなく、映連(日本映画製作者連盟=東映、東宝、松竹、KADOKAWAの大手4社で構成される)が選ぶもの。だから日本アカデミーは関係ない。アカデミー賞の会員に占める大手会社の割合もほんの数%です」とアピールした。

 今回の件で北野監督サイドに対しては「直接ではなく(TIFFの)ディレクターを通して(話した)。謝罪とかそういう話ではない。すでに事務所にもご理解いただいている」と円満解決したと強調した。

 予定になかった反論について映画配給関係者は「やはり北野監督の影響力は大きい。特にTIFFでのトークショーは海外メディアも多数、取材し全世界に発信された。協会としても1度、発言しておく必要があったということ」と内幕を明かす。詰め掛けたマスコミも「ついに日本アカデミー賞と北野監督の仁義なき戦い勃発か」と色めき立っていた。

 ところが「オフィス北野」の森昌行社長は「いつも東京スポーツ映画大賞の授賞式などで言っていること」と発言を問題視している様子などない。さらに「TIFFのディレクターを通して話した」と言う岡田会長の説明とは少し認識が違う。

「正式な申し入れがあったわけではない。ただTIFFの方がお礼に来られた時、『たけしさんはアカデミー賞に誤解があるんでしょうか』と言っていただけ。まあ北野監督は常々『東スポ映画大賞が一番』と言っているわけで、今回の話もその一環でしょう」

 ただ異例の反論を行った岡田会長には「別の狙いがあったのでは」と言うのは映画関係者だ。

「岡田会長がサプライズ反論したのは、パブ(宣伝)という意味では大きい。ネット上でも大きく騒がれた。必然的に授賞式に注目が集まるからプラスはあってもマイナスはない」

 ちなみに北野監督が審査委員長を務める東スポ映画大賞は、来週受賞者を発表する予定となっている。