命知らずのマニアがこぞって上陸する「もう一つの軍艦島」

2015年01月13日 11時00分

広島県竹原市の契島が「もう一つの軍艦島」として人気になりつつある

 長崎県の軍艦島が、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)の2015年の世界遺産候補となったことで、工場マニアや廃墟マニアから注目を浴びている島がある。広島県竹原市の竹原港沖にある契島(ちぎりしま)だ。廃墟マニアからは「もう一つの軍艦島」と呼ばれている。どんな島なのか…。

 


 JR呉線の竹原駅近くにある竹原港から南へ約4キロ。瀬戸内海に浮かんでいる契島は、島全体が亜鉛工場となっていて、昼夜を問わず操業が続けられている。島の中央付近には、先のとがった煙突が立っていて、凜とした美しさを放っている。


 現在、この島には、竹原港から会社の専用船が出ている。しかし、その船には従業員しか乗ることができない。通勤や運搬用に使われているからだ。それでも、民間の定期船が出ているので、大崎上島を経由して契島に渡ることは可能だ。最近は、工場マニアや廃墟マニアなどが、この定期船を突き止めて“上陸”するケースが絶えないという。島で働いている労働者はこう語る。


「最近は、いろいろな人が来るようになったよ。こんなところに来ても何もないのにね。亜鉛の製錬をしているだけだからね。工場の中では硫酸なんかも使っているところがあるから、誤ってそんなところに入ったら簡単に死んじゃうよ。みんな専用のマスクをして仕事をしているんだから。それにしても、みんなモノ好きだね。長崎にある軍艦島が注目されるようになってから、この島に来る人が増えたよ。何でもマニアの間では、『もう一つの軍艦島』と呼ばれているみたいだね」


 島の入り口には、会社の専用船や定期便を停泊させるための波止場がある。工場の私有地ではないので、誰でも立ち入ることができる。しかし、その先は工場の私有地となっているために無断で立ち入ることはできない。工場の入り口には、生活雑貨や食料品などを売っている売店や自動販売機、待合所などがある。ここには、守衛所もあるのだが、そこには人はいない。工場で働いている人たちの休憩所となっている。そのため、簡単に工場内に入ることが可能なのだ。


 契島で亜鉛の製錬をやっているのは、東邦亜鉛株式会社という会社だ。日本で作られている大部分の鉛がこの島で製錬されている。島の中央部から南側にかけては、亜鉛を精錬するための精錬所や先のとがった煙突がある。そして、そのさらに南には、電解工場や物流センターがある。島の西側には、遊歩道があるので、そこを歩いて行けば、危険な場所に入り込まずに工場の全貌を見ることが可能だ。


 また、北側には、2階建ての社宅があり、ここで働いている従業員が暮らしている。その奥の方には、家族用の風呂もある。工場マニアや廃墟マニアなどからすれば、これらの施設がフォトジェニックなものと映るのだ。


「最近は、タチの悪いマニアが増えたよ。ヘルメットをかぶって灰色の作業着を着てやって来るんだ。長靴を履いていたり、飾りでガスマスクを持って来たりしている者もいる。これでは、侵入者かどうかの区別はつかないよ。そして、小さなカバンの中からカメラを出して撮っているんだよ。マニアってのは、本当にすごいことをするねえ。何かがあってからでは遅いのに」(先の労働者)


 契島は、まだ現役だ。島全体が工場となっているのは、日本国内ではここだけしかない。