日本テレビにアナウンス職での採用内定を取り消された東洋英和女学院大4年生・笹崎里菜さん(22)が地位確認を求めた民事訴訟で、東京地裁が26日に和解勧告を行うことが分かった。これまで日テレ側は具体的な反論をしなかったが“最初の一手”で金銭的解決を提示する可能性が濃厚。笹崎さん側がこの和解案を受け入れるかは不透明だが、長丁場も予想された前代未聞の“女子アナの卵裁判”が、年内決着するかもしれない。

「2011年ミス東洋英和」の笹崎さんは昨年9月、競争率数千倍といわれる日テレのアナウンサー職の内定を勝ち得た。ところが、クラブでホステスのアルバイトをした経験が問題視され、今年5月に同局人事局長名で「清廉性の点でふさわしくない」との理由で採用を取り消され、納得できず提訴に至った。

“女子アナの卵”が内定の確認を求めて“将来の職場”を提訴した裁判で日テレ側は、弁護士歴約30年で労働問題のエキスパートであるベテラン女性弁護士・木下潮音(しおね)氏を代理人に選任して徹底抗戦の構え。だが、11月の第1回口頭弁論(東京地裁)には誰も出廷せず、不気味な雰囲気を漂わせた。反論の骨子も明らかではない。

 次回弁論期日を来年1月15日に控える中、今月12日に非公開で進行協議が実施され、同26日に地裁が和解勧告することが分かった。

 和解勧告は裁判所側が原告・被告双方に提示し、問題解決の落としどころを探る。労働問題に詳しいアディーレ法律事務所・岩沙好幸弁護士はこう語る。 

「解決金を日テレ側が支払い、笹崎さんが来年4月から就労しないことを主な内容とする和解勧告が行われると思います。解決金の相場は賃金の3~6か月分が多い。ですが、今回のように、日テレ側がイメージダウンを避けるために早期解決したいと強く思っている場合は、賃金の1年分以上の金額で和解が成立する可能性もあると思います」

 和解勧告はたいてい、裁判所の発案による。ただ今回のケースでは、日テレ側が裁判所に和解勧告を提起した可能性があるとも。

「通常は、双方の主張・反論を数回繰り返してから、和解勧告が行われることが多いです。そう考えると、今回の和解勧告のタイミングは他の事案と比べてかなり早いと思います。もしかすると、早期解決を望む当事者から強い和解希望があったのかもしれませんね」(岩沙氏)

 まだ具体的な反論を明らかにしていない日テレ側が“最初の一手”として和解を提示。金銭での事態収拾を望んだ可能性もある。

「局内では、木下潮音弁護士の『潮』と局の所在地である汐留、『音』と姉御をかけて『汐姉(しおねえ)』と呼んで親しみ、笹崎さんとうまく落としどころを見つけられないか期待しています」(日テレ関係者)

 同局の新入社員の年収は推定600万円。先述の通り、1年分以上の金額、たとえば1000万円の解決金を用意するかもしれない。
 ただ、笹崎さんはアナ職での入社を熱望しており、金銭での解決案を受け入れるかは不透明。

 一方で、笹崎さんの代理人・緒方延泰弁護士は地裁に提出した書面(10月10日付)で、和解について「条件次第である」と含みは持たせた。テレビ界では「笹崎さんが勝訴したとしても、アナとして仕事しづらいのでは」との意見が多く、緒方氏も第1回口頭弁論後、記者団に「(それは)現実的に危惧したけど、日テレを信じている」と話すにとどめた。笹崎さんが一転して、入社を断念すれば急転直下、電撃的な和解となるかもしれない。

 雪が舞う日本列島の年の瀬に、民放の雄と女子アナの卵は一気に“雪解け”するか――。