今年も、テレビドラマ「孤独のグルメ」(テレビ東京系)が大きな話題になった。中年の主人公男性が訪れる知る人ぞ知る飲食店をチェックするため、テレビにくぎ付けになった人も多いだろう。今回は、見逃してしまった人やグルメファンのために、今年の夏から秋に放送されたSeason4に登場したメニューから、印象に残っているものを原作者の久住昌之氏(56)に選んでもらった。撮影秘話と併せてどうぞ。

 過去に放送された店はもちろん、Season4に登場した店も連日大行列。昨今は、松重豊演じる主人公が行った店への“巡礼”を趣味とする人がいるほどで、今年は過去に登場した店を集めた本まで発売された。ドラマの後に放送されるコーナー「ふらっとQUSUMI」ですべての店を訪問している久住氏も、その影響力には驚くばかり。全国各地で声をかけられるのはもちろん、先日はこんなこともあったという。

「取材で行ったパリの凱旋門前で、イタリアの大学に留学している中国人の学生さんに声をかけられたんだよ。『いつも見てます。孤独のグルメの最後に出てる人ですよね?』って」

 ネットなどでチェックしているのだろう。放送された店には、韓国や台湾の人も“巡礼”に訪れる。

「そうそう、登場した店同士のコラボレーションも起きてるんだ。Season3に出た東京・鶯谷の鳥椿(大衆居酒屋)の店長が、家族サービスで静岡・河津のワサビ丼の店(かどや)に行ったんだって」

 店主同士、盛り上がるのは自然の流れ。「うちも孤独のグルメに出たんですよ」「その後、混みましたよねえ」。あまりのおいしさに感動した鳥椿の店主が「うちの店にも卸してくれないか」と頼んだ。今では入荷できたとき限定で、都内でワサビ丼が食べられる。

「放送するとすぐに行列になっちゃうみたいだからね。今年放送したSeason4に出た箱根のステーキ丼なんて、松重さんが撮影2日後に奥さんと行ったらしいよ(笑い)」

 下記で紹介する「厳選メニュー」は、そのステーキ丼も含めた「Season4で印象に残っているお店」だ。

「ホント、スタッフがよく探してくるし、Season4の1回目で撮影したみゆき食堂(東京・清瀬)の名前を出してきたときは『おお!』って思ったよ。実はボクが知ってる店で、漫画で描こうと思ってたんだけど、ページとタイミングが合わなくて描けてなかった店だったから。そういう苦労が視聴者の皆さんにも伝わってるんじゃないかな」

 ネットなどでも反響が大きい。先のステーキ丼の回では、店にアワビ丼もあったのだが…。

「ボクがステーキを選んだら、ツイッターに『アワビいけ、ハゲ!』って(笑い)。あと、まだハイハイしているような年齢のお子さんを持つ女性からツイッターやメールで連絡があってね、そのお子さんはすごく泣くらしいんだけど、孤独のグルメを見せると泣きやむんだって」

 赤ちゃんまでも夢中にさせるとは…。本紙紙上で定期的ににフード特集を掲載しているが、やはり“食”は偉大である。

☆孤独のグルメ=「週刊SPA!」(扶桑社)で不定期連載中のグルメ漫画。久住氏の原作で、作画は谷口ジロー氏。雑貨輸入業の主人公・井之頭五郎が仕事の合間に立ち寄った店で食事をする姿をその心模様とともに描く。先週、Season4をまとめたブルーレイ、DVDボックス(写真右)が発売された。登場した店の“その後”や日間賀島ライブのドキュメント映像など、特典も満載。

☆くすみ・まさゆき=漫画原作者、漫画家、エッセイスト。「スクリーントーンズ」名義で音楽活動も行っており、今回のドラマの音楽も担当している。

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「孤独のグルメ」原作者の久住昌之氏(56)特別に本編やDVDにも収録されなかったメニューを教えてくれた。福岡編で登場した「一富」(福岡市博多区中洲4―2―24)の「ソースカツ丼」は、薄いトンカツをさいの目に切ったものが乗せられている。「スプーンで食べる。皿に乗ってるんだけど、これがうまい。酒のツマミにもなるはず」

「いろり家」のステーキ丼 (C)TV TOKYO
「いろり家」のステーキ丼 (C)TV TOKYO


 ◆神奈川・箱根「いろり家」(箱根町宮ノ下296)のステーキ丼。

「肉も米もタレのバランスとか、すごく具合がいいし、何より“偉そう”じゃないんだよね。肉もフライパンで焼いてるし」

「アトム」のハムエッグ定食とカツ皿(C)TV TOKYO
「アトム」のハムエッグ定食とカツ皿(C)TV TOKYO


 ◆東京・枝川の「アトム」(江東区枝川3―8―8)のハムエッグ定食とカツ皿。

 店はタクシーの運転手さんのたまり場。「中華のシェフかなんかやってた人みたいでおいしかったなあ」

「シャンウェイ」の黒チャーハン(C)TV TOKYO
「シャンウェイ」の黒チャーハン(C)TV TOKYO


 ◆東京・外苑前「シャンウェイ」(渋谷区神宮前3―7―5-2F)の黒チャーハン。

 この回では主人公が野球場に行くシーンがあるのだが、球場を借りたり、エキストラを用意できたのも番組が力を持った証し。「漫画が元になったシーンでもあるし、うれしくてね。音楽を担当している僕も、それに合わせた曲を作りました」

「乙姫」のしらす天ぷら(C)TV TOKYO
「乙姫」のしらす天ぷら(C)TV TOKYO


 ◆愛知・日間賀島「乙姫」(南知多町日間賀島西港)のしらす天ぷら。

 海の幸は地元の人も自画自賛。島ではDVDに収録するため、久住氏率いる「スクリーントーンズ」の野外ライブを行う予定だったのだが、大雨で体育館に移動したとか。