【団塊記者の取材回顧録】転移性肝がんによる肝不全のため死去した菅原文太さん(享年81)は「仁義なき戦い」(1973年)が大ヒットしてシリーズ化されトップスターの仲間入りをしたが、もう一つの代表作が「トラック野郎」シリーズ(75~79年、全10作)だ。

 1975年7月18日、1作目の「トラック野郎・御意見無用」(鈴木則文監督)に出演中の文太さんを都内のホテルでインタビューしたとき「トラック野郎」の“誕生秘話”などを大いに語った。当時41歳。

 電飾で飾ったギンギラの長距離トラックの運転手、星桃次郎に扮する文太さんと愛川欽也(80)扮するやもめのジョナサンが繰り広げるアクションコメディー。

「4年以上前になるかな。『人斬り与太・狂犬三兄弟』に出ていたとき、キンキン(愛川)が司会をやっているテレビ番組に出まして、収録の合間に彼がぼくのところに寄ってきて『機会があったら一緒に映画やらしてよお』って迫るんだな。そこで意気投合しちゃって番組そっちのけで映画の話になっちゃって(笑い)」

 それ以後会うたびに映画の話に。「何回もぼくの映画にキンキンを登場させようと提案してきたんだけどうまくいかなくて。それがトラックの運転手の企画が出たらトントン拍子に話が進んで、それでやっと実現できたということですよ」

 2人の役どころについて「彼は元警察官で8人の子持ち運転手でどこか陰のある男という役柄。こっちはトラックぶっ飛ばす単純な男で全く対照的な役柄なんです」とアツく語った。

「彼はギャグに関してはうるさいんですね。ギャグのブレーンがいてそこで練ってきてあれやこれやポンポン出してくる。まあ、いいものはどんどんいただいちゃってますけど」

「まあ、ぼくとしては東映映画も変わったといわれるようなものをファンにお見せできればと思ってますよ。とにかくああいう奇妙キテレツな魅力を持つ男とやるなんてうれしいですね」

 これまでになかったタイプの共演者を得て張り切っていた。

「ぼくらの世代は何でもかんでもやりたがるみたいなところはあるね。どうしてなんだといわれても自分でも分からないけど終戦直後の飢餓感がそうさせるのかなあ」

 文太さんと愛川の絶妙なドタバタコンビぶりや、マドンナ役で出演した中島ゆたか、由美かおる、夏目雅子さんら数々の女優が花を添え、映画は大ヒット。「仁義なき戦い」に代わる東映のドル箱シリーズになった。(阪本)