菅原文太さんの訃報を受け、映画「トラック野郎」シリーズで“やもめのジョナサン”こと松下金造役で共演した俳優・愛川欽也(80)が1日、菅原さんとの思い出を明かした――。

「今年の春先(別の仕事の打ち合わせで)東映に行き、そこで文ちゃんと会った。その時はどこか悪いなんて、まったく聞いていなかったから…びっくりした」と戸惑いを隠せない様子の愛川。

「トラック野郎」では菅原さんの演じる一本気で人情家の「星桃次郎」との名コンビで人気となったが、もともと映画の企画は「俺が文ちゃんに話をしたことから始まった」という。

「何かのテレビ番組の収録終わりの喫茶店で、文ちゃんに企画を話したところ『いいよ』と。それで東映に話を持っていった。文ちゃんは桃次郎の役を楽しんでいたと思う。『仁義なき戦い』とは全然違う役柄だったけど。最初はヒットするとか考えたこともなかった。夜中遅くに撮影が終われば、必ず宴会があったし、文ちゃんはよく飲んでいた。下手すりゃ毎日宴会なんてこともあった」

 菅原さんといえば「仁義なき戦い」シリーズでの任侠路線のイメージも強いが、愛川は「俺は興味なかったからまったく見てなかった。だから、俺にとっての文ちゃんといえば桃次郎なんだよね」。

 同シリーズは第10作まで制作されたが、 実は“幻の第11作”の制作の動きがあった。

 数年前、愛川から「どうだい文ちゃん、最終回を作らないかい」と企画を持ちかけたが、菅原さんの返事は「キンキン、もういいんじゃねえか」というもの。「あ、もういいんだな(と思った)。それでその話はなくなった」と愛川は寂しそうに語った。

 最近の菅原さんは政治的な発言も目立っていた。これには「変わったな、というか、文ちゃんの本音のところにはそういう部分があったんだなと思った」と驚きを口にした。

 最後に「俺がもうちょっと酒が飲めれば、いろんな話ができたかな。赤ちょうちんとかでさ。悪かったなあ」と故人をしのんだ愛川。「あの映画は東映でなければできなかった。ほかの映画会社ではできなかったよ」と青春時代を懐かしんだ。