映画監督の園子温氏が9月22日放送の「SMAP×SMAP」(フジテレビ系)に出演した際、「『キムタクを追放しろ』みたいなことを言ったことになってるんですよ」と話していた。

 これは2012年1月に本紙が報じた記事を指しているのだろう。

 園監督は「言ったことになってる」というが、そんなことはない。実際に園監督自身が、インタビューで発言したことを記事にしただけだ。

 そもそもこれは「第54回ブルーリボン賞」の受賞者発表の記事。ブルーリボン賞とは、本紙を含む在京スポーツ紙7紙の映画担当記者で構成する東京映画記者会が制定する映画賞だ。

 ブルーリボン賞は、7つの新聞が同じ日に記事を掲載して受賞者を発表する。そのために受賞者の合同インタビューを7紙で行っている。園監督の発言は、この合同インタビューで出たものだ。

 この時、園監督はキムタクが主演した「SPACE BATTLESHIP ヤマト」について、同じように宇宙戦艦が出てくるハリウッド映画「スター・トレック」と比較して話した。

「『スター・トレック』は無名の俳優をたくさん揃えていた。ハリウッドは企画で勝負するプライドがあるが、日本の映画はプライドがなさすぎ。キムタクとか使う自体が本当に良くない」

 続けて「日本にはすごい役者がいるのに、毎回キムタクとかだったら役者もやる気がなくなる」とも話した。

 これは本紙だけでなく他の6紙の記者、そのうえ取材に立ち会った配給会社関係者ら全員が聞いていること。それなのに「言ったことになってる」という発言は明らかにおかしい。

 そのうえ園監督は合同インタビューの際、「やべえかな? オレ、どうなっちゃうんだろう。でもいいんです。大島渚や野坂昭如みたいな立場を誰も引き継がない。継ぐのはオレしかいない」とも話した。つまり「キムタクを使うな」と記事にされるのは、覚悟のうえの発言だったはずだ。

 にもかかわらず「SMAP×SMAP」では「プロデューサーがキャスティングの時に持ってくる名前がいつも同じ。考え方を変えた方がいいっていう話を言っただけ」と釈明。そのうえ「今度一緒に映画をやりましょう」とSMAPに呼びかけるシーンもあった。

 園監督が2年前から考えを変えたのなら、それをとやかく言うつもりはない。ただ「言ったことになってる」のではなく実際に言ったことは認めるべきだ。現場には本紙以外に多くの記者や関係者がいたのだから。

 付け加えると最近の日本の映画界は、作品の批判を一切許さない雰囲気がある。昔は園監督が言うように、大島渚さんや野坂昭如さんらがご意見番となっていた。それを自ら「引き継ぐ」と言った園監督には本紙も期待していただけに、SMAPにすり寄る姿は残念で仕方がない思いだ。