ハリウッドで米国の1960年代前後の音楽を題材にした映画が続々と製作されている。日本でも公開中の映画「ジャージー・ボーイズ」(クリント・イーストウッド監督)は4人組ポップグループのザ・フォー・シーズンズを描いている。「シェリー」「君の瞳に恋してる」などの大ヒットで世界で1億枚以上のレコードを売った、日本でもおなじみのグループだ。


 来年公開される予定なのはザ・ビーチ・ボーイズを描いた伝記映画「ラブ&マーシー」。さらにビートルズを描いたドキュメンタリー映画「ザ・ビートルズ」は「ビートルズ/レット・イット・ビー」以来、45年ぶりの劇場映画だ。


 ほかにも、ジェームス・ブラウンを描いた伝記映画「ゲット・オン・アップ」、ジミ・ヘンドリックスの「オール・イズ・バイ・マイ・サイド」、マイルス・デイビスの「マイルス・アヘッド」、フランク・シナトラの「シナトラ」、パンクバンドのグループ名がタイトルの「ラモーンズ」などなど。このブームを米メディアは「レジェンド・バック・ミュージック」と呼んでいるという。


 米映画事情通は「いま米国ではアメリカン・コミックのスーパーヒーロームービーやシリーズもの、3D映画に陰りが見えてきています。製作費がメチャクチャかかるし、作り手がリスクを負いたくないからです。若者の映画離れもすさまじい。そこで製作費がかからず、そのミュージシャンの固定ファンの集客が見込めて、年配の人が青春時代を思い出したくなり、映画館に足を運びたくなるよう、60年代前後の音楽映画が続々と作られてます。当時、青春時代を過ごした人々は“ドル箱”と呼ばれてます」と指摘する。


 当時はビートルズ以外はコンサートビデオが出ておらず、MTVもなかった。その世代の人たちは「当時の音楽を映像で楽しみたい」というわけだ。