大阪市で10月1日から「大阪市客引き行為等の適正化に関する条例」が全面施行される。ミナミやキタをはじめとする市内の繁華街において、ぼったくりガールズバーに案内するなどの迷惑な客引きが多すぎるため、客引きを全面禁止するわけだ。

「10月以降はまったく収入の見通しがたたない。今さら深夜のコンビニとか新聞配達とかもできないし、いっそのこと芸人を廃業しようか考えてます」

 愚痴をこぼすのは大阪の劇場をメーンに活動する20代の若手芸人。彼の芸人としての年収は10万円にも満たない。現在の生活を支えているのが、何を隠そう、キャッチのアルバイトだという。

「キャッチのバイトは完全自由出勤。自分は居酒屋中心で、複数の店と契約しています。お客を連れていけば売上の10%から20%がもらえる。完全歩合制ですが、時間に束縛されないのが芸人向き。若手だと、いつ先輩芸人からお呼びがかかるかわからないし、普通のバイトはすぐクビになりますから。何より、芸人としてのトーク力が生かせるのが魅力でした」

 ミナミの繁華街で老若男女問わず声をかけ、足を止めさせればしめたもの。一発ギャグやモノマネなどの一芸で、なんとか笑いを取って、機嫌をとりつつ契約店舗へ客を送り込む。実際、客引きのバイトをする芸人は多い。

「キャッチを天職だと信じて、風俗やボッタクリバーのキャッチに転身して、月収50万円を稼ぐ元芸人もいるほど」(前出の若手芸人)。

 だが、10月1日をもって客引き行為適正化条例が全面施行される。たとえキャバクラなどの風俗店でなくても、指定された地域での客引きは、全面禁止に。違反者には5万円の過料が科せられる。

 若手芸人の食い扶持がなくなり、続々と廃業すれば、お笑い界全体にも影響が出かねない。