「7か国語で落語」三遊亭竜楽

2012年08月15日 18時00分

 落語を7か国語に翻訳し、欧州各国で公演している落語家がいる。三遊亭円楽一門の三遊亭竜楽(53)だ。2008年にイタリアで公演したのを皮切りに、これまでフランス、ポルトガル、スペイン、ドイツなどでそれぞれ現地語の落語を披露してきた。その行動はまるで落語の伝道師。海外で落語をすることになったきっかけ、客の反応、言葉の問題は?

――海外で翻訳落語を始めたきっかけは

竜楽:08年にイタリアの「フェスティバルジャポネーゼ」に参加することになり、勢いで「翻訳して落語をやる」と言ったことからです。いくつか覚えたのをやったらものすごくウケた。覚えきれず9割日本語でやったのもウケたんですよ。

――日本語でも!?

竜楽:最初に、例えば「ちりとてちん」なら「知ったかぶりのこういう話」と現地の言葉で説明します。あとは演技で理解してくれる。落語てのは座ったまま右向いて左向いてとやってるだけで、見る人の頭の中に人物が浮かび上がる、豊かに想像できる芸です。想像は無限ですから。それから「ドアにノブはなくて横に開けます」といった説明も事前にします。

――イタリア以後は

竜楽:その話が広まって、翌年はイタリアのローマ大とミラノ大に呼ばれ、フランスへも。10年にはイタリア、フランス、スペイン、ポルトガルへ。去年はドイツへ行きました。それぞれの現地語に英語、日本語を加えて7か国語です。CDにもしました。

――現地での反応は

竜楽:ものすごくウケます。ただ国によってウケ方が違って、これが面白い。イタリアはハデにやるほどウケる。大阪人に似てます。フランス人はやっぱり気取っているので、芸術性を見せた方が喜ぶ。ドイツ人は真面目だから、ひと言ポーンと言って間を取り考えさせるほどウケる。イタリアと同じぐらい大爆笑でした。オチを察知する能力が最も高いのはスペイン人。他国はこちらがお辞儀したところでオチだったと気付くのが、スペイン人はオチを言ったところでワーッと反応する。で、実は一番笑わないのが日本人(笑い)。

――興味深いですね

竜楽:ドイツには日本人がイメージするような芸人がいないんですよ。世界で一番薄いジョーク集はドイツのって言われるぐらいで、コメディアンといえば政治風刺してるのがいるぐらい。だから出てきて頭を叩き合うような芸はウケない。落語は考えさせる芸だから、そういう意味でドイツ人に向いてました。

――翻訳はどのように

竜楽:その国の人に手伝ってもらいます。実は各国の大学に日本の笑いを研究している人がいるんですよ。ローマ大には三遊亭円朝の研究者、ベルリン大には上方漫才を研究してる人がいる。

――7か国語を話せる

竜楽:実は全然話せない(笑い)。まず丸暗記して、後から意味を知る。日本人が苦手な仏語の「r」の発音もたまたま最初からできた。それでできると思われて、話しかけられて困っちゃうんだけど(笑い)。

――選ぶネタは

竜楽:「ちりとてちん」や親子で禁酒の誓いを破る「親子酒」など。世界のどこでもある話で、共感できます。

――目指すものは

竜楽=私がイタリアに行ったのは、ちょうどこの先どうするかな、名人の道もないだろうし、上手ぐらいで終わるかなと思っていた時期でね。落語ってのは紙に起こせば3ページぐらいの話なのに、イタリア人はひっくり返って笑うわけですよ。それを見て「世界で通じる。これだ」と思った。私が海外でやることで落語や日本文化に興味を持ち、日本語を勉強して、日本に落語を見に来てくれるようになればいい。日本と落語の伝道師です。今までやった仕事でこれほど醍醐味があるものはないね。

☆さんゆうてい・りゅうらく=本名・柳井淳嘉(やない・あつよし)。1958年9月12日生まれ。群馬県出身。中央大学法学部卒業後、仕事を転々とし、27歳で五代目三遊亭円楽に入門。92年に真打ち昇進。CD「三遊亭竜楽の七か国語落語~味噌豆編」が発売中。