韓国の歴史上の英雄が日本軍を撃退する反日映画「鳴梁(ミョンリャン)」が、韓国映画の観客動員記録を更新している。8月24日に1600万人を突破すると、同30日には約1693万人に伸び、3日には1700万人を突破。韓国ではハリウッド映画「アバター」の持つ1362万人がこれまでの最高記録で、それを軽く抜いた。複数の韓国メディアによると、「鳴梁」のキム・ハンミン監督は「日本人は歴史についてあまり知らない。この作品は、日本人が歴史を知ることの手助けになる」として、日本でも公開するよう、準備を進めているという。

 映画は16世紀末、豊臣秀吉による朝鮮侵攻の一つである慶長の役、鳴梁海戦を描いたもの。韓国の英雄・李舜臣(イ・スンシン)将軍率いる韓国水軍12隻の船が日本水軍330隻を打ち破るという内容だ。

 相変わらず韓国人に都合の良い内容にもかかわらず「日本人に歴史を教えてやる」と“上から目線”の態度で、日本での公開を目指すという。韓国事情に詳しい文筆人の但馬オサム氏はこう語る。

「何とも韓国らしい物言いですね。彼らにとって歴史認識の共有とは、日韓が共同で歴史の研究、精査をするのではなく、韓国の一方的な歴史観を日本に押し付けることを意味します。“無知な日本に歴史を教えてやる”という尊大な態度です」

 そもそも、他国間で歴史の共有などできない。ナポレオンはフランスの英雄だが、周辺国からすれば侵略者となる。チンギスハンはモンゴルの英雄だが、やはり見方を変えれば侵略者になってしまう。

「韓国の主張する独善的で子供っぽい歴史観に迎合する必要はまったくありません。歴史に無知なのは韓国の方です。李舜臣将軍は秀吉軍を打ち負かしたことで、韓国では安重根と並ぶ抗日英雄ですが、韓国では近代になるまで忘れられた存在だったのです。彼を最初に評価したのは、何を隠そう、日本なのです」と但馬氏。

 江戸時代に書かれた「朝鮮征伐記」などに、鋼鉄の敵将として李舜臣の名前が出てくる。その後、征韓論から保護国化に至る過程で、朝鮮ブームが起こり、李舜臣の再評価があった。

 但馬氏は「その後“東郷平八郎が日本海大海戦の戦勝を李将軍に祈願した”などの都市伝説も生まれ、そういったイメージが逆輸入する形で韓国に定着したのです」と指摘する。

 これまで韓国でも朝鮮出兵を描いた映画やドラマは過去いくつか作られてきた。しかし、そのほとんどは、秀吉軍に国を蹂躙(じゅうりん)されるといった被害者の側面を描くものがほとんどだった。

「1980年代に、その名も『壬申倭乱』(文禄の役の韓国での呼称)という連続時代劇ドラマが爆発的ヒット。以後、勝ち戦としての壬申倭乱のイメージが浸透しました。同ドラマの最大の売りは特撮で再現された李将軍の水軍の活躍です。李将軍の亀甲船が秀吉軍を壊滅する回では、驚異的な視聴率を記録しました。実はこの特撮シーンを担当したのは、戦隊シリーズで知られる東映特撮の重鎮・矢島信男と彼のスタッフ、つまり日本人でした。『反日ドラマくらい日本人の手を借りずに作れよ』と思いましたが…」(但馬氏)

 現在、李将軍の武功と言われるものも虚実入り乱れた誇大なものだ。

「秀吉の死で日本軍が和睦を申し入れ、引き揚げる途中を襲ったりしたのがせいぜいで、それ以外はほとんど負け戦でした。何年か前、李将軍の亀甲船を復元した研究家がいましたが、海に浮かべた途端、沈んでしまいましたから。無敵の亀甲船も含め、勇猛果敢、知略にあふれた李将軍のイメージは実は多分に日本で作られたものなのです」(同)

 どう考えても、歴史を知らないのは韓国側なのだが…。