大声否定の裏に深くて大きい闇が――。覚醒剤取締法違反(所持、使用)などの罪で起訴された人気歌手ASKA被告(56=飛鳥涼、本名・宮崎重明)の初公判が28日、東京地裁で開かれ、検察は懲役3年を求刑した。起訴内容を認めていたため、裁判は争いもなく終わると思われたが、検察側がASKAと一緒に逮捕された愛人の栩内(とちない)香澄美被告(37)の名前を出すや、空気は一変! 同被告との薬物使用を執拗に問いただす検察側にASKAが「そんなことはしない!」と突然大きな声で否定する一幕もあった。この裏側にこそASKA事件最大のタブーが隠されていた。

 黒のスーツで法廷に姿を現したASKAは軽く一礼。職業を「歌手」と即答し、検察官が読み上げた起訴内容に「間違いありません」と低いトーンでよどみなく答えた。

 だが、開廷から数十分が経過したあたりで空気が一変する。被告人質問で検察から栩内被告について聞かれた時だ。

 ともに覚醒剤の陽性反応が検出されているが、栩内被告とは「一緒に薬物を使用したことはありません」。栩内被告の薬物使用についても「全く知りません」「入手ルートは持っていないはずです」と小さめの声で証言した。ならば、ASKA自身が栩内被告の知らないところで薬物を“盛った”のかというと、ASKAは突如、大きな声で「そんなひきょうなことはしていません!!」と、必死に否定してみせた。

 そればかりか、栩内被告のことをASKAは「大事な人」と表現。「好きなのか?」と聞かれ「はい」とうなずき、今後の関係について聞かれると「その前に話さないといけないことがたくさんあるので…。この場で言うのは無理です」と答える始末。体調不良のため法廷には姿を見せなかった元アナウンサーの妻・洋子さん(59)が「治療に寄り添って家族とともに支えていきたい」と書面で情状酌量を訴えていただけに、いまだ愛人との関係解消に踏み切れないASKAに傍聴人からはタメ息が漏れた。それほどズブズブの不倫関係だったことがわかる。

 とはいえ、ここが裁判のキモではない。突然大声になるほど栩内被告をかばい続けたのは、別の事情があるからだ。

 異様な“大声否定”の裏にあるのは、男女の愛情などという生やさしいものではなく、栩内被告が在籍していた大手人材派遣会社パソナグループの存在が影響している。

 同グループ代表の南部靖之氏はASKAの長年のタニマチとして有名。また栩内被告は同グループに勤務する傍ら、“接待要員”という顔も持ち合わせていたのは周知の通り。

 接待の舞台は東京・麻布の迎賓館「仁風林」。ここに政財界のVIPがこぞって集まり、華麗なるパーティーを開いていた。

「南部氏が力をつけたのは、仁風林で政財界の大物とパイプを築いたから。パーティーでは栩内被告ら“接待要員”の存在も注目された。そこで何が行われていたかはここでは明かせないが、栩内被告がパソナの表も裏も知るアンタッチャブルな存在であることは間違いない。そのことは南部氏がタニマチだったASKAも重々承知している」とは内幕を知る人物。

 栩内被告が一介のOLでないことは、関西の大物ヤメ検弁護士・黒田修一氏が弁護団に名を連ねたことでもわかろう。

「今後のことを考えれば、ASKAはパソナにこれ以上迷惑はかけられない。彼は栩内被告=パソナと捉えている。不利になるようなことは決して口にできない」(同)

 事件後、捜査当局のなかには栩内被告を突破口にパソナグループにメスを入れようと意気込む勢力もあったが、少なくともASKAは同被告をかばったことで“仁義”を果たしたと言える。

 一方では、このところ暴力団ルートの摘発が相次いでいる。19日にはASKAに薬物を譲渡した容疑で現役暴力団組員とその周辺人物が逮捕された。捜査関係者の話。

「逮捕された組員は仲間内から“クスリ屋”と言われていたほど薬物を扱うことで有名だった。その量も尋常ではない。彼がパクられたのは組織的にも大打撃。当局の本気度がうかがえますよ」

 それは捜査本部を戸塚署(新宿区)に設置したことからも明らかだ。前出関係者は「徹底的に暴力団ルートを追及するつもり。この部分に関して当局はASKA側と何らかの協力態勢を敷いているのではないか」とも指摘する。

 この日の裁判で検察は懲役3年を求刑。弁護側は執行猶予付きの判決を求めており、9月12日午後に判決が言い渡される。しかしそれは形式的なことで、事件が抱える本当の“闇”が暴かれる日はくるのだろうか…。