埼玉県が本腰を入れてアニメで“県おこし”をしている。昨年から「埼玉県=アニメの聖地」の地位を確立するためのイベントをスタートし、今年は観光課に「アニメの聖地化プロジェクト」を立ち上げたのだ。県がアニメを重視する背景とは? プロジェクトに関わっている埼玉県産業労働部観光課の松本直記氏、プロジェクト副座長の柿崎俊道氏らに聞いた。

 松本氏によれば、埼玉県がアニメに力を入れるきっかけは2007年に放送されたアニメ「らき☆すた」だったという。

「モデルになった久喜市の鷲宮神社では、年末年始の参拝客が放送前の9万人から47万人にまで増えたんです」。鷲宮は観光地ではなく住宅街。そこに年末年始の4日間で47万人もの人が訪れたことは、県庁職員に大きな衝撃を与えた。

 というのも、埼玉県は実は観光資源に乏しい県で、名のある観光地といえば川越と秩父ぐらい。全国区の観光地がひしめく近県に比べ明らかに弱い。

 そこに起こったのが“鷲宮の奇跡”だった。

「のどから手が出るほど新しい観光コンテンツが欲しかった」(松本氏)ところに降って湧いたチャンスを逃すまいと、当時観光課にいた島田邦弘氏(現神川町副町長)らが「アニメツーリズム検討委員会」を立ち上げ、2009年に第1回の会合を開いた。

 この会合に出席した柿崎氏によれば、「テーマは2点。漫画家、アニメーターの支援と、アニメファンをどうやればさらに誘致できるかです」。

 これが発展して昨年10月、埼玉県などが実行委員会を務める「アニ玉祭」(さいたま市大宮区)が開催され、2日間で6万人を集めた。開催趣旨には堂々と「『埼玉県=アニメの聖地』としての地位を確立」と記されている。「アニ玉祭」は今年も10月に開催されることが決まっており、これに先立って、久喜市や「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の秩父市などアニメの舞台となった4市をスマホアプリを使って巡る「埼玉聖地横断ラリー」(8月29日~10月12日)を開催する。

 今年から立ち上がった「アニメの聖地化プロジェクト」では、「鷲宮の成功例などノウハウ、データを整理して市町村のアニメによる町おこしをバックアップする」(松本氏)。

 埼玉県は本気だ。