知人がバングラデシュで診療を受けたと偽り、海外療養費などをだまし取ったとして、警視庁は国際手配中のタレント・ローラ(24)の父親ジュリップ・エイエスエイ・アル容疑者(54=バングラデシュ国籍)を詐欺容疑で27日までに逮捕した。1年以上の逃亡の末、一転して出頭。何がジュリップ容疑者を出頭に駆り立て、なぜ日本国内での逮捕となったのか。さらにこの間、ローラ本人との接点はなかったのか。深まる謎を追跡する。


 ジュリップ容疑者は、2008年12月~09年1月、知人のバングラデシュ国籍の男が同国の病院で診療を受けたとの虚偽の申請書を東京・世田谷区役所に提出し、海外療養費約87万円をだまし取った疑い。別の仲間が逮捕された後の一昨年8月に日本を出国したため、警視庁が国際刑事警察機構(ICPO)を通じて国際手配し行方を追っていた。


 警視庁組織犯罪対策1課は同容疑者を中心とした5~6人のグループが08年12月~12年3月、杉並区や神奈川県相模原市、栃木県日光市でも同様の虚偽申請をして計約1200万円をだまし取ったとみて調べている。


 海外療養費は国民健康保険制度の一つで、海外で支払った医療費の一部が還付される。在留資格のある外国人も加入できる。


 23日に日本に再入国、26日に弁護士に付き添われて警視庁杉並署に出頭したジュリップ容疑者は、「そんな事実はありませんし、私は100%関係ない」と否認。日本に戻った理由を「家族のことが心配だった」と説明しているという。


 1年以上もの逃亡からなぜ一転、国内での出頭となったのか。国際手配といえば、海外で警察が発見するなり即逮捕、というイメージを持つ人も多いだろうが、実情はまったく違う。国際手配にもいろいろ種類があり、元神奈川県警国際捜査課刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏によると「今回は青手配ではないか。青手配の場合は(手配犯の)情報を求めるということです。例えば入国や出国履歴などです」。


 だから海外で身柄を拘束されることはなかった。


 ジュリップ容疑者が日本に再入国できた可能性はいくつか考えられるという。最も考えられるパターンが、本人側の関係者や弁護士などが間に入り、出頭を前提に入国したというケースだろう。


 日本で逮捕状が出ていても、指名手配されていなければ、普通に入管を通れてしまう可能性もあるという。警察と入国管理局は別組織のためだ。いずれにせよ、ジュリップ容疑者は出頭するために日本に再入国したということだろう。


 それにしてもこの間、ローラとの接点はなかったのか。一部週刊誌は「ローラがバンコクで密会か」などと報道。事実なら父親説得のためという見方もできるが、現時点で会ったという確証はゼロ。とはいえ、こんな証言もある。


「以前から、『毎年パパからプレゼントをもらっている』という話をしていたけど、6月に入ったころ、今年もプレゼントをもらったというような話を“うっかり”していた。お父さんがらみのことになると話を聞きにくくて、7~8人集まっているパーティーだったけど、みんな突っ込んでは聞けなかった」(ローラの知人)。直接会わずとも郵送などでプレゼントなどはもらえるだけに、プレゼントが事実でも、ローラが父親の動向を知っていたとは限らない。


 ローラは27日、ブログで「お父さんが、警察に弁護士さんと一緒に出頭しました。わたしは、悪いこと、正しいこと、すべてがはっきりして欲しいと思っています。たくさんのお騒がせをして、ごめんなさい」と謝罪。また所属事務所は「報道されている内容に関しては、報道が本日されるまで関知しておらず、コメントする立場にございません」と文書を送り、ローラと父親が無関係であることを強調した。