世界を騒がせた元ロリータスターが今度は監督として“問題作”をひっさげ来日した。映画「ヴィオレッタ」(5月10日から全国で順次公開)の女性監督エヴァ・イオネスコ氏(48)と主演女優アナマリア・ヴァルトロメイ(15)が16日までに、都内で本紙のインタビューに応じた。エヴァ氏は、4歳時から実母に撮られたヌード写真集を発表され、12歳で出演した映画では局部無修整のセックスシーンを演じさせられた伝説の女優。今回の作品も、日本の映画倫理委員会が当然、R指定に“認定”する問題作だ。

 1977年、実母イリナ氏が4~13歳の間のエヴァ氏を撮影したヌード写真集を発表した。幼いエヴァ氏は瞬く間に“ロリータの星”となり、史上最年少の11歳で「プレイボーイ」誌の表紙を飾った。さらに、胸のみならず性器まで露出しての性行為を演じた映画「思春の森」に12歳で出演。世界に衝撃を与えた。日本でも近年、この作品の無修整版DVDの発売をめぐって逮捕者が出る事態となった。

 そのエヴァ氏がメガホンを取った今作は、母娘の複雑な関係を“美しすぎる”子役のアナマリアに託した自伝的映画だ。ルーマニア出身のアナマリアが、写真家の母から被写体にされる美しい娘ヴィオレッタ(エヴァ)を演じた。

 劇中で求められるがまま、シースルーのレオタードやガーターベルトに身を包み、開脚など過激なポーズをとる。要求はエスカレートし、ついには下着を脱ぐよう指示される。

 撮影時は10歳だったが、扇情的すぎる美貌だ。世界中で上映されてきたが、日本では映画倫理委員会が16日「R15指定」とした。その前の段階では、R指定よりも過激な「審査適応区分外」と一時は暫定的に判断するほど問題視されていた。

「アナマリアの下着姿やキスシーンはありますが、そもそも胸や陰部の露出、つまりヌードはない作品なのに、当初は映倫から『少女の性的な描写を想起させる』と判断されました。最終的には児童ポルノをあおってはいないとの判断になり、修整することもなく、ノーカットで公開できることになった」(宣伝会社)

 エヴァ氏は「今まで検閲の問題は生じなかった。フランス、ドイツでも公開後に批判は全くないし、フランスでは夜10時にテレビで放映された。感じ方は自由だが、日本の『ロリータ』というとらえ方は間違い」と不服の気持ちを込めて語った。

 現在中学3年生のアナマリアはどう考えるか。「(撮影時)私は11歳弱だったけど、理解して役を受けた」。ヌードが出演条件であれば「断っていた」という。もし、映画のように実母がアナマリアのヌード写真を撮ったとしたらどう考えるだろう。

「そんなことをする人ではないけど、もちろん耐えがたいこと」

 普段は「友達と映画に行く」ような普通の少女だ。取材を見守る父親は「恋愛は18歳までダメ。私は日本人より厳しい親かもしれない(笑い)」と口を挟んだ。

 日本の児童ポルノ禁止法では「衣服の全部または一部を着けない児童の姿態で性欲を興奮させるものの姿態」と定義されているが、解釈は人によって異なる。エヴァ氏は「それでいいのではないか。全部が四角い中(規制)に収まるのはどうかと思うが、保護されてもいいのでは」と言う。

 一方、同法がアニメや漫画など文化的産物の表現規制を加速させることも懸念する。「たとえば、イランのように政治的なことを話せないとかは困るが、検閲や規制はある意味で大切。バカみたいなアーティストもたくさんいる。アート名目でいろんなことが行われるより、規制があったほうがいい」とエヴァ氏。

 現在、エヴァ氏とイリナ氏の母娘関係は断絶。写真集や映画への出演は、本人の意思ではなかった。映像や画像が出回ったことで、母親を相手に裁判を起こして勝訴したこともある。

「母が撮った写真でも私に肖像権があるとの決定が出た。私に仲直りの気持ちはあるが、彼女にはない。会わないけど、私の写真を見て喜んでるんじゃないか」

 児童ポルノへのアレルギーと興味が混在する日本では、公開後に論議が巻き起こりそうだ。それでも「青少年やお母様、子供に映画を見てもらいたい。“教育映画”とは言えないが、教育的要素も入ってると思う」とエヴァ氏は語った。