地元横浜市から2002年に聴覚障害2級と認定された佐村河内守氏(50)だが、再検査で感音性難聴と分かった。この“回復”ぶりに「お医者さんは『驚き』だと言っている」と、同市健康福祉局障害者更生相談所の山田実事務係長は語る。

 検査法の1つ「純音聴力検査」では、左右それぞれの耳が70デシベル以上なら身体障害者手帳の交付に該当する。佐村河内氏の2級は聴覚障害では最も重く、同100デシベル以上。今回の検査では右48・8、左51・3と大幅に下がった。

「一般の人は20以下。それに比べて難聴であることは間違いない」(山田氏)が、「何ゆえに回復したのかは、市の方では調べようがない」(同)

 佐村河内氏の会見を受けて、横浜市も記者会見を開き、身体障害者手帳の所持者に再検査の義務はないと説明した。障害が固定された状態とみなされた者に、手帳が交付されるためだが、それが今回、佐村河内氏への“賠償請求”にも微妙にからんでくる。

 佐村河内氏は2月末、障害者手帳とともに福祉特別乗車券と重度障害者医療証も市に返還。これに伴い、同氏が「耳が聞こえるようになった」とする3年前以降に給付した福祉サービスを調べたところ、医療費の本人負担分が免除される同医療証の利用で、24万2970円の公費支出があったことが分かった。同乗車券はシステム上「金額には換算できない」(健康福祉局障害福祉課・上條浩課長)という。

 この返還を本人に求められるのかについては「いつから『障害のない』状態になったのかを明確に確認できないので、(給付サービス分の金額の返還を)求めることは難しい」(同)。身体障害者福祉法には罰則もあるが、刑事告訴なども「考えていない」のが現状だ。

 ただ、市も手をこまねいてはいない。「3年前」より以前についても、佐村河内氏への福祉サービスの給付を洗い出す。「法令を基に、これまでの事例などを踏まえて対応を考える」(健康福祉局障害企画課・嘉代哲也課長)構えだ。