4人組ロックバンドの「クリープハイプ」がレコード会社に勝手にベストアルバムを出されたと「異議」を唱えた騒動で、音楽業界ではこのバンドの将来を危惧する声が噴出している。

 コトの発端はメンバーがオフィシャルホームページで、来月発売予定のベスト盤「クリープハイプ名作選」がバンドの意思でなく「レコード会社側が一方的に決めたもの」と表明。ファンからは同情の声も寄せられた。

 2006年にインディーズデビューし、12年にビクターからメジャーデビューを果たし、昨年はCMソングで使用されたシングル「憂、燦々」がヒット。メジャーシングル3枚でベスト盤は異例だが、背景には「レコード会社移籍」を巡る一悶着があるという。

「ビクターとしては、そりゃベスト盤も出したくなるでしょ。ここまで育て上げ、これからって時に移籍の話ですから。話によればユニバーサルへの移籍が内定しているとか」とある音楽事情通。

 音楽業界の中には「移籍時にはベスト盤で、育ててくれたレコード会社へ恩返しする」という“暗黙の了解”がある。

「『ベスト盤に異議』というと、宇多田ヒカルが4年前にユニバーサルミュージックとモメた件を引き合いに出す人がいるけど、ビクターは『クリープハイプ』を半ばゼロから育て上げたから質が違う。売れ出して“ハイ、さよなら”で、しかも“暗黙の了解”すら声明を出して足蹴にするではね。これじゃレミオロメンの二の舞いになるという声は多い」と同事情通。

 05年に「粉雪」をヒットさせたレミオロメンは09年にビクターからエイベックス内のレーベルに移籍。「レミオはベスト盤の権利すべてを自分のところへ持っていった」(レコード会社幹部)。業界内ではビクター同情論が巻き起こり「様々な媒体がレミオは取り上げないという風潮が出来上がった」と同幹部。その後、レミオは活動を休止した。

 この末路を見れば、レコード会社移籍は簡単なようでナーバスな問題。自分の首を絞めることにならなければいいが…。