「現代のベートーベン」からエセ作曲家に成り下がった佐村河内守氏(さむらごうち・まもる=50)が、“損害賠償ラッシュ”に遭いそうだ。今月から5月まで予定されていたコンサートは中止を余儀なくされ、企画会社は億単位の賠償請求を検討中。同氏の楽譜を販売する音楽出版社も近く訴訟を起こすとみられ、空前の“請求書地獄”に陥ることになる!?

 世間を欺き続けた代償は莫大なものとなりそうだ。

 ゴーストライターを18年間務めてきた桐朋学園大非常勤講師・新垣隆氏(43)の告発を機に、佐村河内氏には非難の声が集中。広島市は7日、同氏に授与した「広島市民賞」を取り消し、文書で「市民をはじめ多くの人々を裏切り、失望させるものであり、広島市民賞の被表彰者としての面目を汚すものである」と辛らつな言葉を並べた。

 日本レコード協会も10万枚以上のヒットを記録した「佐村河内守」名義のCD「交響曲第1番 HIROSHIMA」のゴールドディスク認定を取り消した。

 失ったモノは名誉だけではない。今後、次々に損害賠償請求が起こされそうだ。

 コンサート企画会社の「サモンプロモーション」は、今月から5月まで予定していた全国17公演の中止を発表。17日にチケットの払い戻しを開始するが、すでに5000枚以上が売れている。関係者いわく「会場使用料でも数千万円の赤字が出る」そうで、損失は総額1億円以上にのぼり、同社は損害賠償を検討中だ。

 ソチ五輪フィギュアスケート男子代表・高橋大輔(27)のショートプログラム使用曲「ヴァイオリンのためのソナチネ」などを含む4作品の楽譜をレンタル・販売する音楽出版社も、騒動ですべてが中止となり数百万円の被害が出る見込み。一部報道では、こちらも損害賠償を検討中という。

 CD発売元の「日本コロムビア」も計算が狂った。全CDの出荷停止だけでなく「ソチ五輪で高橋選手が活躍すれば、楽曲が再び脚光を浴びてヒットすると考えていた。それが全部オジャンになった」(同社社員)。そればかりか、同社には購入者から返金を求める電話も殺到している。現時点で個別の返金に応じる予定はないというが…。

 いずれにしろ、カギを握るのは、新垣氏が暴露した「耳は聞こえている」が本当かどうかだ。佐村河内氏の代理人は否定しているが、仮に全聾(ろう)までも“偽装”だった場合、世間のさらなる反発は避けられない。

「レコード会社にも『なぜ見抜けなかった』『最初からグルなのでは?』という声が飛ぶことになる。社員は気が気じゃないはず」(音楽関係者)

 耳鼻咽喉科の名医で知られる「赤坂山王クリニック」の梅田悦生医師は「詐病かどうかを検査するには脳波聴力検査=ABR(聴性脳幹反応)があります。電極をつけ、ヘッドホンで音を流したとき、脳波が出ていれば聞こえているはずだということになる」と解説。

 佐村河内氏は聴覚障害2級の身体障害者手帳を持っているが「2級はどんな大きな音を出しても全く聞こえない状態。本当に脳波聴力検査、ABRまでしたのか。どう診断書を書いたのか。理解できない」(同)。

 一方、佐村河内氏に手帳を交付した横浜市の障害者更生相談所の担当者は「個人の案件なので答えられない」としつつも「一般論として医師が脅されてウソを記載したなどという客観的根拠があれば、手帳の返還命令を出すことはできます。ただ、今回のように第三者の方が、障害者ではないと言っているだけでは難しいのでは」とコメントした。

 温泉付きの高級マンションに住んでいると言われる佐村河内氏。ぜいたくな暮らしが一夜にして暗転してしまった。