「現代のベートーベン」からエセ作曲家に成り下がった佐村河内守氏(さむらごうち・まもる=50)にさらなる重大疑惑が浮上した。18年間にわたりゴーストライターを務めてきた桐朋学園大作曲専攻非常勤講師・新垣隆氏(43)が6日に会見を開き、全聾(ろう)であるはずの佐村河内氏が「実は聞こえている」と暴露したのだ。同氏の代理人弁護士は「障害者手帳を確認した」と猛反論するが、関係者からは障害者手帳そのものの不正取得疑惑を指摘する声まで上がっている――。

 作曲者偽装問題が、よもやの全聾への疑惑にまで発展した。

 この日会見した新垣氏により、佐村河内氏のウソが次々と暴かれた。ピアノは初歩的レベル、人気だった「交響曲第1番 HIROSHIMA」は別のタイトルだった、などなど。だが、そんな中で最も注目されたのは、佐村河内氏は本当に全聾だったのか?という点だ。

「初めて会ったときから今まで、耳が聞こえないと感じたことは一度もない」と証言した新垣氏は「私自身が彼と接触する時は、ほとんど彼と2人だけだったんです。やり取り自体は、普通の(健常者とするような)やり取りをしていました」とし、続けて「やはり耳が聞こえないのだと言いだした時は戸惑い、その必要が果たしてあるかどうか? それはこのような環境を成り立たせる(全聾の作曲家として売り出す)ための方法であったということは、私は了承してました」と驚がくの告白をしてのけた。

 そして「佐村河内氏は全聾であることを装っていたのか?」という質問に、新垣氏は「はい」と断言した。

 この発言に対して佐村河内氏の代理人の折本和司弁護士は「聞こえないのは本当だと思う」と反論し「聴覚障害2級の障害者手帳を確認した」とその根拠を語った。

 もちろん新垣氏も手帳の存在は知っている。それでも「聞こえている」と証言したのだ。

 代理人は「全聾か否か」の判断材料として障害者手帳を挙げたが、確かに「聞こえないから交付されている」が一般常識だろう。だが、何らかの方法で入手することは本当にできないのか。

 この件で思い出されるのは、2007年に北海道で起きた聴覚障害偽装事件だ。800人以上が聴覚障害を訴え、身体障害者手帳を取得。ところがフタを開けてみると大半が健常者で、医師と共謀して手帳の不正取得を狙ったものであることが判明した。この時は関与した複数人に実刑判決が下された。

 裏社会の事情通は「障害者手帳は、医者を巻き込めばすぐに取れるもの。私の周りの詐欺師やヤクザで、問題ないのに持っている人は複数いる」と話したうえで「障害者手帳を不正取得するに当たって、聴覚障害は利用されやすい中の一つだ」と言ってのけた。つまり「聞こえる者」でも手帳は手に入れられるのだ。

 新垣氏は会見で、自分が作曲したテープ等を聞かせ、それに対して佐村河内氏が修正を指示したこともあったという。

 会見を開き、正直に全てを打ち明けたゴーストライターの言うことが真実なのか、それとも雲隠れしている佐村河内氏の代理人が正しいのか?
 万が一、佐村河内氏が「聞こえていながら」身体障害者手帳を入手していたとしたら、どんな罪になるのか。

 元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士は「ウソを言って障害者手帳を手にしたら身体障害者福祉法違反に当たる。手帳を使って公金をだまし取ったら詐欺にもなる」と指摘。板倉宏日大名誉教授(刑法)も「ウソをついて手帳を詐取したとすれば、詐欺に当たると思います」と同じ見解だ。

 舞台裏を知る関係者は「新垣氏を支持するグループの狙いは、佐村河内氏が楽曲だけでなく、障害者をも冒とくしていたことを白日の下にさらすことなんです」と話す。

 ちなみに障害者手帳を持っていれば、税金が減免されたり、公共交通機関の料金に割引が適用されたりする。

 社会的弱者を装い、商売に悪用しカネ儲けをしていたとすれば、あまりに悪質で到底許されるものではないだろう。