【ヤマカン×中村×伊藤「風立ちぬ」鼎談②】宮崎監督 少女への本音も出して

2013年09月05日 16時30分

ジブリがアニメに声優以外を起用する理由

 

――声優以外の方を起用する意図はどうですか。中村さんも「ねらわれた学園」でAKB48の渡辺麻友を起用されていますけど。

 

中村:ジブリは明らかにオーバーアクトを嫌っていると思うんですよ。でも僕もアニメ業界の人間として、オーバーアクトの良さもわかるんです。例えばエヴァンゲリオンならオーバーアクトのほうがいいと思う。作品によるんだと思います。僕はどちらも好きだけど、ファンのみなさんにもできれば両方許容してほしいかな。演技とはこうあるべき、こういうものだって決めちゃわないほうがきっと面白いと思うんですよ。声優も俳優も素人も、作品によってブレンドしていけばいい。役者のデレクションにもいろいろな幅があってほしい。庵野さんの芝居だって面白がってもらえたら、それだけアニメ全体が豊かになるんじゃないかって思う。たしかに本編前にauのCMで庵野さんがしゃべった時は「これはつらい」って不安に思いましたけど(笑い)。でも映画の中での彼の小さな芝居、ぽそっぽそっと、非常にせまいふり幅のなかに、演技をつけないで置いてくる彼の一言一言が、僕は胸に染みて。

 

山本:アニメの絵の情報量と声の芝居は反比例するとよく言われます。ジブリくらいの絵が作れたら、あのくらいの声でちょうどいいんです。僕らみたいなリミテッドアニメでじゃ声の情報量や音楽を詰め込み、埋め合わせするしかない。それだとあの起用はできない。だから僕は自分のアニメでは絶対、実写の役者を起用しようとは思わない。僕らはそういう絵を作れないから。だから適材適所なんじゃないですかね。

 

中村:僕は一部で怒られてますけど「あいうら」では3人の素人の子を起用してまして(笑い)。

 

山本:僕も次の「Wake Up, Girls!」は素人ですよ。しかも7人。

 

伊藤:やってるじゃないですか(笑い)

 

中村:でもそうでなければ出せない作品全体の意図があるならば、それはありだと思うんですけれど。

 

山本:言い訳すると、7人は声優のメソッドで鍛えています。役者のメソッドではないです。

 

中村:ふり幅の狭いキャスティングは、結局はアニメの将来の幅を狭めてしまうかもと思うんですよ。堀越二郎が日本の飛行機を一人で背負おうみたいに、自分自身が日本のアニメの将来まで背負おうとは思ってませんけど、自分がささやかでもアニメの豊穣さに寄与できるならば、僕は嬉しいです。

 

山本:声優の中でも役者に仕事を奪われるとかいう人間もいるんですけど、じゃあお前が実写に出ろよと。それでいいじゃないか。それでとんとんじゃないか。そういう分野、ジャンルで分けるのはナンセンス。だから僕は実写(「私の優しくない先輩」)の監督もやったし、その辺りはどんどん横断していっていい。ジブリの声は最近全然気にならないし、今回も純然たる役者さんの声は気にならなかったです。

 

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