【ヤマカン×中村×伊藤「風立ちぬ」鼎談①】宮崎監督は最後に自分をねぎらった

2013年09月05日 12時00分

「風立ちぬ」公式ガイドブック

 アニメ界の巨匠・宮崎駿監督(72)が1日、公開中の映画「風立ちぬ」を最後に長編映画制作からの引退すると発表した。東スポWebでは引退発表前の8月中旬に新作「Wake Up, Girls!」が控える山本寛監督(39)、「ねらわれた学園」「あいうら」の中村亮介監督(37)、「ソードアート・オンライン」「銀の匙 Silver Spoon」の伊藤智彦監督(34)による特別鼎談を行い「風立ちぬ」について語ってもらった。今後のアニメ界を背負っていく3人には宮崎の最後の作品にかける思い、技術的ないびつさとクリエイターならば否定できないその魅力。さらには宮崎の“後継者”問題までと幅広い意見が飛び出した。

 

 

 「風立ちぬ」でアニメは終わる!?

 

山本寛(以下山本):今日見て、見立てホヤホヤなんですけど、いやあ良かった。まず「風立ちぬ」の前に流れた高畑勲監督の「かぐや姫の物語」の予告編で既に涙腺崩壊してました(笑い)。ひたすら走ってる。ぐちゃぐちゃになって走っている。宮崎さんが動、高畑さんが静というパブリックイメージがあるけど今回は逆ですね。宮崎さんは悟りの境地に入っていて、僕は彼の“遺言”だと思ってます。もうお歳ですから、ここ最近の宮崎さんの作品には正直過度の期待はしていなかったんですが、今回は唸りました。結論から言っちゃいますが、僕がアニメを面白いと思う最後の作品です!

 

一同:さっ最後ですか!

 

山本:アニメは「風立ちぬ」で終わりです。いや、その後に「かぐや姫」があるんですが(笑い)。僕らの作品なんてアニメじゃない。“アニメもどき”“アニメみたいなもの”です。僕の作品なんて特にそう。打ちひしがれましたね。「風立ちぬ」はすべてのカット、一挙手一投足がアニメなんです。次のコマが待ち遠しい。歩いているだけで何が起こるんだろうとわくわくする。僕の作品なんて一カットもアニメになっていない。完敗です。僕は宮崎駿原理主義者なので感情のままに言います。出来不出来なんて馬鹿らしい。あれがアニメで、あれ以外はアニメじゃないです!

 

――言い切りましたね。中村さんはどうでしたか

 

中村亮介(以下中村):僕は初日に妻と見たんですけど、評価は分かれましたね。僕には良かったけど、妻には「よく分からなかった」と。ただこの映画は、クリエイターには必ず刺さる作品だと思うんですよ。必ず点数が甘くなる。だって自分たちの話ですから。何かを作るということに対しての、真摯でピュアな思い。逃げない、ごまかさないその思いが、映画から自然とこぼれ落ちて、にじみ出ている。美化するでもなく、茶化すでもなく、見栄を張るでもなく、気負うでもなくて。技術的に言えば、それは気になるところは色々ありますよ。僕ら若い演出のほうが、細かい映像技術については宮崎さんより詳しい部分もあると思うんです。でも、「風立ちぬ」はそういう作品ではないんだと。僕ら演出が、作品を面白くしよう、楽しくしようとして色々なことをしますよね。でも「風立ちぬ」を見ていると、そうした全てが小手先のことに感じてくるんです。自分でもまだ未整理なんですけど、演出って何なのかなって。考えさせられた作品でしたね。

 

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