辛坊氏「クジラが体当たり」「けじめつける」

2013年06月28日 11時00分

謝罪会見する辛坊氏。左は岩本氏

 太平洋横断中に小型ヨットが遭難し、救助されたニュースキャスターの辛坊治郎氏(57)が、本紙の取材に応じ、恐怖の瞬間と苦悩の胸中を赤裸々に語った。「自分でケジメをつけようと思います」との言葉に込められた決意とは――。

「そりゃあ気分も沈みますよ…。同行した岩本さんの夢をかなえるために出発したのに、望みをかなえてあげられないばかりか、(事故によって)マスコミの前に立たせることになってしまった。申し訳ない気持ちで、いっぱいです」

 本紙の直撃に辛坊氏は、力なく声も途絶えがちに答えた。テレビで見せるテンポの良い語り口調は鳴りを潜め、明らかに憔悴した様子だった。


 辛坊氏と全盲のセーラー岩本光弘氏(46)は今月16日に小型ヨットでの太平洋横断に向けて福島・小名浜港を出港。順調な航海を続けていたが、21日朝、何らかのトラブルで船内への浸水が確認され、第2管区海上保安本部に救助を要請した。

 救難ボートに乗り移った2人が救出されたのは同日午後6時21分。22日午前0時すぎからの会見で辛坊氏は「本当にご迷惑をおかけしました。たった2人の命を救うため、11人の海上自衛隊の方が犠牲になるかもしれなくて。僕は本当に素晴らしい国に生まれました」と涙を流した。

 気になるのは浸水原因だ。24日、太平洋横断を企画した「プロジェクトD2製作委員会」がトラブル発生前の映像を公開。カメラは海面から5メートルのポールに設置されたもので、動画は40秒間。29秒を過ぎたあたりで突然「ドン!」という衝突音とともに、船体が激しく揺れる様子が映し出されている。ここで“何か”があったことは間違いない。

 衝突直前の映像には右舷前方に黒い物体が接近しており、衝突音は3回。ぶつかった相手は、前記の物体、その正体はマッコウクジラだという。辛坊氏も「マッコウクジラしかありえません」と答え、次のように恐怖の瞬間を振り返った。

「私は仮眠をとっていましたが、下から『ドン、ドン、ドン』という突き上げられる感覚はありました。波ではない何か。嫌な予感はしました。専門家の方が言うには子連れのマッコウクジラじゃないかと。親と子供で3回ぶつけてきたのか、子供を守るために親が威嚇してきたのかは分からない」

 マッコウクジラの頭部には大きな岩と同等の強度がある。尾なども相当硬く、ヨットに穴を開けることなど造作もないだろう。

「かといって、漂流物とは違うので予測が難しい。これだけの騒ぎを起こしてしまった私が言うのもあれですが、リスク要因としてクジラの衝突は考えていました。しかし、実際に遭ってみると…防ぐことは容易ではありません。仮に(クジラが来ると)分かっていても、どう防げばいいか思いつきません…」

 救助されてから数日が過ぎ、九死に一生を得た辛坊氏のもとには激励の言葉とともに、1000万円以上ともいわれる税金を投じた救出劇に批判の声も上がっている。

 辛坊氏は現状を受け止め、こう話した。

「自分でけじめをつけようと思います。ただ、助けてくださった自衛隊の方が私の出演する関西の番組のファンだそうで…。『辛坊さん、頑張ってください!』とおっしゃってくれて。彼らへの恩返しということなら、自分の頑張る姿を見せることも必要なのかな…と」

 落胆、無念、感謝…。そして自らの“贖罪”“賠償”の仕方について、しばらくは自問自答の日々が続きそうだが、再び元気な姿が見られることを期待したい。

☆しんぼう・じろう=1956年4月11日生まれ。大阪府岸和田市出身。80年に早大法学部を卒業後、読売テレビに入社。「ズームイン!!朝!」などの情報番組のリポーターやキャスターを務め、後に報道局の情報番組部長、解説委員長を歴任する。2001年から11年まで「ズームイン!!SUPER」でニュース解説を担当し、知名度が全国的に広がる。10年に読売テレビを退社。在職中に出演していた「ウェークアップ!ぷらす」「たかじんのそこまで言って委員会」などが継続中。シンクタンク「大阪綜合研究所」を設立。12年末には初期の十二指腸がんで手術を受けた。小型船舶一級免許、海上特殊無線技士の資格を持つ。