内田裕也さん“破天荒すぎる連載”留置場から原稿届いた!

2019年03月20日 11時00分

死去した内田裕也さん

 これが本当の「監獄ロック」!? ロック歌手で俳優としても活躍した内田裕也さん(享年79)が17日、肺炎のため都内の病院で死去したことに、音楽界から悼む声が相次いでいる。そうしたなか、音楽専門誌「ローリングストーン」のシニアライターを務めた経歴を持ち、現在は音楽評論家、ラジオDJのジョー横溝氏(50)が裕也さんの雑誌連載にまつわる驚きのエピソードを披露。なんと連載初回の原稿が「思いも寄らぬところ」から届いたという。それは――。

 裕也さんの破天荒なロック魂に魅了された人間は多い。ジョー氏もその一人で、その魂を世間に届けるために、「ローリングストーン」2011年7月号(発行は6月)から裕也さんの連載を開始することになった。

 だが締め切りの直前、まさかの事態が発生。同年5月13日、裕也さんは交際中の女性との別れ話がこじれ、復縁を迫ろうと脅迫文をポストに投函。さらに女性宅に侵入したとして、強要未遂と住居侵入の疑いで警視庁原宿署に逮捕されてしまったのだ。

 普通であれば、こんな状況で連載などできるはずがない。それ以前に原稿を書くことができないはずだが、なんと原宿署に留置されている裕也さんから初回の原稿が届いたという。

「編集部も『これこそロック』と一切、打ち切りなど考えてませんでした。書き出しは『いま手錠につながれるぜ!』だったかな? あとから、これこそ『獄中記だぜ』とか『ムショからの手紙、監獄ロックだろ?』と振り返っていた気がします」

 ロックを感じさせるエピソードはそれだけでない。その原稿には「原宿署の検閲印」が押されていたという。

「留置中のことですから当然といえば当然ですが、まさか本当にこういう出来事に遭遇するなんて夢にも思いませんでした。手に取った瞬間に『ロック』を感じて、しびれたというか、震えましたね」とジョー氏は当時を振り返る。これこそまさに、ロックミュージシャンの生きざまだ。

 ロック歌手としての裕也さんは「ヒット曲がない」などと言われることもあるが、ジョー氏は「そんなことはありません。裕也さんは、いまの音楽界では当たり前になったことの先駆者でもあります」と指摘する。

 代表的なのが野外フェスティバルだ。「いまでは野外フェスは当たり前ですけど、裕也さんは野外フェスがまったくメジャーじゃなかった1974年8月、福島県で行われた『ワンステップフェスティバル』をプロデュースしました」

 また、海外タレントの招へいも裕也さんが開拓した。

「昔は呼び屋(プロモーター)の力が強く、利権でもあった。勝手にミュージシャン同士でコラボするなんてご法度でした。それが裕也さんはジェフ・ベックを最初に日本に呼んだことでも知られる。また実現はしませんでしたが日本人で初めて、あのミック・ジャガーとグアムでライブをやる直前まで話を進めたこともあった」

 口でほらを吹くだけなら誰でもできるが、「それを実行に移してしまうのが裕也さんの最大の魅力だ」とジョー氏は言い切る。

 裕也さんがライフワークにしていた「ニューイヤーズワールドロックフェスティバル」は18―19年の年越しで46回目を迎えた。

「車いすを使うようになり、思うようなパフォーマンスができなくなってもステージに立ち続け、世界平和を訴えた。生きざまをさらすことがロックだと信じて。あれだけ行動した人はいません」

 最後にジョー氏は「裕也さんは『2020年までは頑張りたい』と話していました。東京五輪が開催される年に、その目で日本の行く末を見たかったのでは。僕からは裕也さんに『キープオンロックンロール!』という言葉を贈りたい。『安らかにお眠りください』なんて言ったら叱られます」と話した。

 裕也さんのロック魂は、今後も確実に日本に生き続ける。

☆じょー・よこみぞ=1968年生まれ。東京都出身。早稲田大学卒。2017年までローリングストーン日本版シニアライターを務める。現在は音楽をはじめ、社会問題に関する取材・執筆を行い、新聞、雑誌、ウェブでの連載も多数。ラジオDJとしても「BOSE presents SOUNDS GO FREE」(InterFM897)を担当するなどレギュラー多数。音楽イベントや社会・政治問題のシンポジウム、討論番組のMCとしても活躍。