突然の死から今年で10年になる米歌手マイケル・ジャクソンの闇の部分にフォーカスした衝撃的なドキュメンタリーが今週米国などで放送され、波紋と混乱が広がっている。米ケーブル局「HBO」が制作したこの作品、当時少年だった2人の男性の赤裸々な証言をもとに、マイケルによる児童虐待の実態に迫ったもので、今後は“キング・オブ・ポップ”の評価が大きく変わる可能性もある。

「Leaving Neverland(さらばネバーランド=原題)」と題された同作品は1月に米サンダンス映画祭でプレミア上映され、話題を集めた。そして今週、HBOは同作品を前・後編の2部に分け、北米と英国で2夜連続で放送したのだ。

 メガホンを取ったのはドキュメンタリーを数多く手がける英国のダン・リード監督。1990年ごろ、まだ幼かったウェイド・ロブソン氏(36)とジェームズ・セーフチャック氏(41)が、マイケルの住居兼テーマパークだった「ネバーランド・ランチ」で過ごした日々の中で受けたとされる児童虐待について激白し、その証言を中心に展開する。

 これに対してマイケルの遺族側は「公開処刑だ」としてHBOを非難する声明を発表。疑惑を全面否定している。だが、放送後からSNSなどでは「もうこれまでのようにマイケルの歌は聴けない」「犯罪行為は糾弾されるべき」など、マイケルへの批判であふれている。

 米CNNによると、カナダでは少なくとも3つのラジオ局が「今後はマイケルの曲を流さない」と宣言。ロサンゼルスにあるハリウッド大通りの歩道に刻まれた「ウォーク・オブ・フェーム」のマイケルのプレートは何者かによりペンキで落書きされ、汚されたプレートをマイケルの長女パリス・ジャクソンが清掃する姿が伝えられた。

 だが、マイケルの児童虐待疑惑が浮上したのは今回が初めてではない。全盛期だった1993年にはファンの少年が性的虐待で提訴したが、最終的には和解。児童への性的虐待や誘拐、恐喝など複数の罪状で起訴された2005年の裁判では陪審員が無罪の評決を下した。

“いまさら”感のある今回のドキュメンタリーだが、近年ハリウッドを中心に広まった性的暴行やセクハラの撲滅運動により、死後10年を経てマイケルに対するより厳しい目が向けられている。