ATG作品を知っているだろうか? ATGとは日本アート・シアター・ギルドの頭文字。良質のアート系作品を目指し、大物だけではなく、新進気鋭の若手監督も数多くメガホンを握り、既存の日本映画とは一線を画した数々の傑作を生んできた。そのさんぜんと輝く歴史の中からDVD37作品、Blu―ray14作品がキングレコードから、超お得価格(DVD=税別1900円、Blu―ray=税別2500円)で発売された。今回はその作品の中から、ミス東スポ2019きっての映画好き・あいだあい(28)が4作品をピックアップして紹介する――。

【金閣寺】あいのオススメ1本目は、高林陽一監督の「金閣寺」。言わずと知れた三島由紀夫原作の同名小説を映画化した作品です。主演は篠田三郎さん。お父さん世代には「ウルトラマンタロウ」の主人公・東光太郎として有名かな。

 幼いころから吃音に悩まされて暗い青春時代を送っている青年・溝口をリアルに演じています。

 溝口は、金閣寺を知ったときから“美の象徴”として憧れを抱くようになっちゃう。そして、大学で知り合った悪い友人の誘いで出会った女性と関係を結ぼうとするけど、いつも金閣寺の幻影が頭に浮かんでうまくいかない。それで、溝口は金閣寺を征服するという意識を持つようになって、しまいには「金閣寺を焼かねばならぬ」という思いなってしまい…。

 京都の美しい町並みとは対照的なドス黒い青年の内面が印象的です。

 それと、先日お亡くなりになった市原悦子さんの濡れ場も見どころの一つ。不貞を働く溝口の母親役なんですけど、生々しい演技がすごいんです。内田朝雄さんや加賀まりこさんといった脇役も存在感たっぷりですよ。

【聖母観音大菩薩】次なる作品は、若松孝二監督の「聖母観音大菩薩」。若松監督がプロデュースした「愛のコリーダ」(大島渚監督・76年)の松田英子さんを主演にしてメガホンを握った異色官能映画です。

 福井に伝わる八百才まで生きてなお乙女の面影を持つという不老不死の美女・八百比丘尼。その伝説そのままに若狭彦神社の境内で奉仕の日々を送る比丘尼(松田)がいました。そして、その彼女の元には様々な男たちがやってきます。皮膚がかさぶたに覆われ町の人々からのけ者にされた老人、傷害で逃亡中の犯罪者、強姦魔…。比丘尼はその男たちに自らの体を開いて、精を思う存分吸い取らせまさに聖母のように接します。若狭小浜の美しい自然の中で、このミステリアスな役柄を松田さんが熱演。

 作品を見終わったときに「生と死」「本当のやさしさとは?」「思いやりとは?」などいろいろなことを考えさせられちゃいました。

 脇を固めるのは、蟹江敬三さん、鹿沼えりさん、石橋蓮司さん、殿山泰司さんと超豪華なの。当時、新人だった浅野温子さんの初々しい演技もすてきでした。

【無常】3作品目は、ウルトラマンシリーズでも有名な実相寺昭雄監督の「無常」。実相寺監督の長編第1作にして、ロカルノ国際映画祭金豹賞受賞、キネマ旬報ベスト・テン第6位を記録した作品です。

 タイトル通り「無常感」がテーマ。しかも、姉と弟の近親相姦という反社会的かつ反心理的な関係を扱ってます。ほぼ50年も前にこんな映画が撮られたことが驚きでした。大学にも行かず仏像の研究に取り付かれる主人公の正夫を田村亮さん、その美しい姉・百合を司美智子さんが演じています。

 琵琶湖近くの旧家の長男・正夫と姉は、両親が留守の雨の日に、広い屋敷に2人だけになり、能面をかぶってふざけているうちに一線を越えてしまいます。

「2人はこうなるのが自然やったんや」。非日常が日常となり、やがて百合は正夫の子を身ごもってしまい…。

 今回選んだ中で唯一の白黒作品ですが、日本的なエロチシズムがすごかったです。さすが実相寺監督といった光のコントラストを使った幻想的なシーンが随所に登場します。非常に重いテーマでしたが、心に残る1本でした。

【曼陀羅】オススメラストは、実相寺監督のATG第2作「曼陀羅」。大胆な性描写と衝撃の映像美で知られる作品です。

 あるモーテルで、2組のカップルが互いの相手を交換してセックスし合う。その様子を盗撮する支配人。この支配人・真木は夫婦そろって「農耕とエロスによるユートピアを実現しよう」という理想を持っていました。あるカップルは支配人の願望に陶酔しはじめる。しかし、ユートピアの欺瞞を知った男が、支配人の妻を犯して自殺に追い込んでしまいます。新天地を求めて船出した支配人でしたが、数日後死体となって浜に打ち上げられ、その手には曼陀羅が握り締められていました…。

 迫力満点の映像美の連続に驚きです。

 支配人を岸田森さん、支配人夫人を若林美宏さん、2組のカップルを清水紘治さん・森秋子さん、田村亮さん・桜井浩子さんが演じています。

 どの作品も平成生まれの私には衝撃的でしたが、今回ATG作品に初めて触れて、日本映画の奥深さを改めて感じることができました。

 作品を知る人は昔の映画館での感動を再び味わってほしいし、若い人にもぜひ観賞してもらいたいです。

☆あいだ・あい=1990年3月30日生まれ、愛知県出身。身長168センチ、B85・W58・H85。血液型=B。趣味=映画観賞、株式投資、ゴルフ。特技=水泳(元愛知県チャンピオン)。資格=ファイナンシャルプランナー、TOEIC895点。