世界的トレンド反映する「おっさんずラブ」旋風が起こした「温かい変化」

2018年12月08日 11時00分

田中圭

 おっさん同士の恋愛ドラマ「おっさんずラブ」(テレビ朝日系)が、今年の「ユーキャン新語・流行語大賞」でトップ10入り。情報誌「日経エンタテインメント!」が選ぶ今年のヒット番付では、安室奈美恵さんとともに横綱に選ばれた。

 このドラマは、モテない不動産会社営業マン(田中圭)が、乙女系の既婚部長(吉田鋼太郎)とドSな後輩(林遣都)から同時告白され、部長の妻(大塚寧々)は離婚し元夫の新たな恋を応援、主任(眞島秀和)も実はドS後輩の元カレで…という、ゲイにとっては夢のようなオフィスラブコメディー。

 今春クールに土曜深夜枠で放送され、平均視聴率はわずか4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったが、ツイッタートレンドでドラマ関連ワードが上位を占めたり、終盤には2度も世界ランキング1位になるなど、SNS世代を中心に大ブームを巻き起こした。公式ブックやLINEスタンプといったオリジナルグッズもバカ売れだ。

 主役の「はるたん」を演じた田中は一躍“時の人”に。過去に出した写真集が重版となり、特集記事を組んだテレビ誌は予約殺到で急きょ増刷。雑誌の表紙をバンバン飾り、テレビでも露出を増やし、俳優としての格をかなり上げた。

 そんなブームを裏づけるかのように、田中ら主要キャスト陣は今なお多忙らしく、流行語大賞表彰式(3日)を欠席。代わって登壇したテレ朝・貴島彩理プロデューサーは「視聴率的には振るわなかった番組だと自分では思っておりまして、ただそんな中でもこのような場に呼んでいただけるということに、テレビ業界なのか、日本なのかの温かい変化みたいなものを、個人的に感じております」と喜んだ。

 LGBT(性的少数者)を扱うドラマや映画というと、当事者がキワモノ的に描かれたり、その悲哀や苦しみ、生きづらさなどがクローズアップされがち。だが「おっさんずラブ」は違った。女優業の傍ら、誰も排除しない“混ぜこぜの社会”を目指す社会活動を25年続けている東ちづるも以前、ドラマの感想をこう話していた。

「シンプルに恋愛ドラマですからね。人間愛ですからね。で、そこ(同性からの告白)に戸惑いもあるんだけれども、そこをグッとフィーチャーしてないというか…が、すごくいいですよね。ちょっと途中で“これってパワハラ的になんないかな”って心配もあったんですよ。ですけれども、そこにいかなかったんで、ちゃんと仕事は仕事、恋愛は恋愛っていうふうになってたんで“あ、よかったぁ〜”って思って」

 このドラマは、世界規模で見た今年のトレンドを如実に反映している。海外で活躍する広告関係者の解説。

「芸能やファッションの世界で今年、一番の話題はやっぱりダイバーシティ(多様性)。広告界ももう細くてきれいな若い白人だけ使っていればいい時代じゃない。今は人種や年齢、体形、そしてジェンダー(社会的な性区別)に関係なく、リアリティーあるモデルが求められ、多様性を見せるのが主流で重要になっている」

 そのシンボル的存在で、名だたるスーパーモデルより今キャスティングが一番難しいといわれるのが、ハリマ・アデンという21歳のイスラム系モデルだ。ソマリア難民で米国へ移住した彼女は、イスラム女性が頭を覆う布「ヒジャブ」がトレードマーク。現在ハイブランドのショーや一流ファッション誌の表紙に起用されまくっている。

 また今年一番といわれるコスメブランドを手掛ける人気歌姫リアーナは、他のどのブランドも数色しか出さないファンデーションのカラーバリエーションを、多様性に合わせ40色も展開し大成功。

「女性の美の基準にしろ何にしろ、価値観が決まっていて、多様性という面では海外よりかなり遅れてる」(前出の広告関係者)と嘆かれる日本で、「おっさんずラブ」旋風が起こした「温かい変化みたいなもの」は、何気にスゴイ現象なのかもしれない。