博多ラーメン「なんでんかんでん」を6年ぶりに東京・高円寺で“復活”させた川原ひろし社長が、深刻な人手不足に悩まされている。川原氏は来年、同店を都内近郊でフランチャイズ展開する計画を持つが、「従業員を集められるかがカギ」と現在、国会で審議中の外国人労働者の受け入れ拡大に向けた入管難民法改正案の成立に注目している。

 同店は9月3日の再開から連日行列ができ、3か月で実に4万人以上の客が来店した。再ブームを果たした人気の秘密について川原氏はこう振り返った。
「予想以上の反響で驚いています。開店前に東スポが記事にしてくれたのをきっかけにヤフーのニュースサイトで長時間トップ記事になった。その後、テレビが7本、新聞や雑誌などを含めると50本以上の取材を受けた。メディアで大きく取り上げてくれた影響が大きかった」

 当初の営業時間は、午前1時までとしていたが、スープがなくなり次第、その日の営業は終了と変更になった。川原氏は「営業時間は再オープンした当初に公表した通りにできず、お客さんに迷惑をかけて本当に申し訳なく思っている。その理由は、スープを今以上に作ることはできるが、お客さんに提供する従業員がいない。現在、従業員3人で店を切り盛りしているが無理が生じている。1人が休むと店はてんやわんやです。年末の忘年会シーズンは、スープがなくなる夜10時ぐらいにラーメンを求めて大勢のお客さんが来る。事情を説明して、店を閉めるしかない状態です」と話す。

 予想外の展開に川原氏は、店の入り口にアルバイト募集のほか「人材不足の為、2階を使用しておりません。ご理解の程よろしくお願いします」という紙を貼った。

「1階と2階にそれぞれ20席ずつ、全部で40席ある。2階で営業すると、従業員2~3人を増やさないといけない。しっかりした接客ができなくなるからね」

 来年、川原氏はさらなる飛躍を目指して都内近郊に数店舗のフランチャイズ展開を計画中で、株式会社「なんでんかんでんホールディングス」を設立した。店で働く従業員は外国人を積極的に採用したいと考えているという。審議中の入管法改正案が今国会で成立すれば、来年4月から施行される予定だ。現在14業種への適用が検討されており、「外食」も含まれる。

 川原氏は「外国人労働者は大好きなのでOKです。32年前、環状7号線沿いになんでんかんでんをオープンした時、在留資格を持ったネパール人の従業員が活躍してくれた。調理場、ホールとも最低限の日本語が話せれば、働くことに支障がありません。大切なのは、本人の性格と日本の文化に深く根付いたラーメン屋のムードを大切にしてくれることだけです。アルバイトでウチに来て働いてくれるなら、1年で一人前のラーメン店のスタッフに育て上げる自信がある」と話す。

 すでに同店には、ネット情報で再開を知った大勢の外国人客が訪れている。さらに2020年の東京五輪に向け、世界各国からラーメン好きの観光客が、なんでんかんでんだけでなく、都内のラーメン店に押し寄せると見込まれる。

 川原氏は「飲食店の経営者からすると、少子高齢化の中で外国人労働者の助けは絶対に必要なんです。五輪ともなれば、都内に大勢の外国人観光客であふれる。そうなればウチだけじゃなく、多くの飲食店経営者が人手不足に直面します。外国人観光客に接客できる外国人スタッフ採用は必要不可欠の局面に来ている。雇う側は、外国人に安心して働けるように魅力ある店にすることが大きな課題になります」と語った。