韓国南部の済州島沖で先日、開かれた国際観艦式で、豊臣秀吉の朝鮮出兵に抵抗した英雄、李舜臣将軍を象徴する旗を韓国海軍が掲揚したのは本紙でも先週報じた。

 日本には事前に自衛艦旗である旭日旗の掲揚を自粛するよう求めていたため、日本は不参加。韓国側は観艦式の参加国に自国と韓国の国旗以外は掲揚しないよう求めたにもかかわらず、自分は“将軍旗”を掲げるという矛盾した態度だ。韓国らしいとも言えるが、実は李舜臣は日本が“発掘”しなければ、韓国では埋もれていたというのだ。

 韓国で李舜臣は、豊臣軍を海上で壊滅させた英雄ということになっている。伊藤博文首相を暗殺した独立運動家の安重根と並んで、韓国が日本に対する嫌がらせによく使うキャラクターだ。

「300枚のユニークな広告が語る こんなに明るかった朝鮮支配」を著した韓国事情に詳しい但馬オサム氏はこう語る。

「李将軍の英雄ぶりは誇大評価された伝説です。秀吉の死により撤兵が決まり、停戦を申し込んだ日本軍を後ろから撃ったというのが真相のようです。李将軍が率いたという亀甲船にしても実在したかも不明です。韓国ではこれまで何度か、李将軍の亀甲船を再現してみせましたが、いずれも海に浮かべた瞬間に沈んでしまいました。とても外洋で海戦を展開するような代物ではないということになります。本来、李舜臣は朝鮮でもどちらかといえば敗軍の将という評価しかありませんでした」

 では、どのようにして英雄になったのか。

「日韓併合で、日露戦争の軍神・東郷平八郎が尊敬する人物として李将軍の名を挙げているという話が伝わり、その株は急上昇したようです。もっとも、東郷が本当にそのようなことを語ったかどうかも実は定かではないのですが」と但馬氏。

 近年では、1980年代の連続時代劇ドラマ「壬申倭乱」で描かれた超人的な李舜臣像が独り歩きし、偶像化に拍車が掛かったようだ。このドラマ、李舜臣の水軍の活躍を特撮を駆使して描くというのが最大の売りだった。その特撮を担当したのが、日本の戦隊シリーズで知られる矢島信男とそのスタッフ、つまり日本人だったのだ。日本人が再評価して、初めて韓国の英雄となったワケだ。