世界的ロックバンド「DIR EN GREY(ディル アン グレイ)」のリーダー・薫(年齢非公表)が、10月6日から始まった欧州ツアー(ロシア、フィンランド、ポーランド、フランス、イギリス、ドイツ)を目前に控え、独占取材に応じた。ここでは、紙面で伝えられなかった9月26日発売の10thアルバム「The Insulated World」の制作秘話を中心とした、薫の言葉をお届けする。

 ——ツアーでアルバム曲を披露したが、新曲の反応は気になる

 薫:アルバムの曲も何曲かやっていたので、硬くなるというか、反応が気になっていたりもしたんですけど、まあ、見に来た人も知らない曲なんで、探り合いになるかなとは思ったんですけど、そんな感じでもなかったので良かったですね。全ての曲が、聞いたら一発で「はい、わかりました」という曲でもないので、簡単にはつかみにくいだろうなとは思っていたんですけど、感覚的には反応が良かったんで、アルバムとして目指していた方向も再確認できたかなと思います。

 ——以前「曲を作るのは遅い方」と。アルバムは苦労した

 薫:本当に探り探りで作っていた。「自分が“いま”気持ちが良い曲」とか、長年やっていると、どうしてもそういうふうになりがちになってしまう。自分が“心地よい”ものにいきがちになる。でも、果たしてそれが、DIRとして「面白いものになる」のかという気持ちが、今回は結構あった。

 ——その気持ちにはどう対応

 薫:それで、このアルバムに関しては自分の気持ちを「半分信じて」「半分信じない」という感じで作っていた。だから、結構悩みましたね。最終的には「これが良いはずだ」と100%自分を信じて作っているんですけど、曲の細かいアレンジだとか、そういう部分は自分が心地良いだけでも「DIRとして今やって正解なのか」という部分が常にありました。

 ——どうやって解決した

 薫:メンバーに聞きました。でも、メンバーの中でも半々で気持ちがあるので、すごく大変でしたけど、漠然としたコンセプトとして激しいものにしたいというのはあった。それでも、じゃあそれをどう表現するかというのは迷いながらでしたね。

 ——大変時間がかかった

 薫:多分、発売日(9月26日)が決まってなかったら、今でも作業していたかもしれない(苦笑い)。

 ——締め切りがあったほうがいいタイプ

 薫:締め切りをバスッと決められた方がいいですね。火事場のクソ力が発動したほうが、最後一気にググッとできる。

 ——どの曲が難産だった

 薫:アルバム8曲目の「Values of Madness」という曲は結構、時間がかかりましたね。ああじゃない、こうじゃないって、いろいろやっていた。

 ——どういう部分で一番迷う

 薫:やっぱり作業していると、ベクトルがブレてくる瞬間があるんですよ。「どういう方向性に行きたいんだ」って。1つのアイデアがあるとしたら、作業の中でいろんな要素が入ってきて、元のアイデアとは違った方向を向くことがある。ボワッと散漫になってくる。でも最終的な基準は「歌」。メロディーがイマイチやなと思っていると、ぼやけてくるし、メロディーが決まっていると方向は決まりやすい。

 ——アルバムタイトルは

 薫:京がつけたんですけど、まあ、人とは違うというか、自分の中での感覚としてタイトルをつけたと思うんですけど。また、それをDIRに置き換えて「新しい世界に行く」という意味も込められていると思います。

 ——アートワークも印象的だ

 薫:今回は色遣いと、目に入った時のインパクトを意識しましたね。それまではボヤッとした、抽象的なものも多かったんですけど、今回は強い感じにしました。

 ——東京国際フォーラムのライブでは、ギター2人(Die、薫)のパフォーマンスが対照的なのも面白かった

 薫:見せ方の違いというか、熱量の伝え方の違いというところかな。まあ、Dieの場合は髪も長いし、目の前に大きい扇風機を置いているんで、派手に見えやすいところもあるんじゃないかな(笑い)。まあでも、違うタイプのギタリストやと思いますよ。よくファンからの手紙でも「同じようなフレーズを弾いているのに、まったく別の曲を弾いているように見える」と来ますね。

 ——4年ぶりの欧州ツアー。海外だと曲によっての反応も日本と違う

 薫:特にミディアム系の曲のほうが分かりやすい。日本だといわゆる「口ずさむ曲」ですか。つい歌ってしまう曲。でも、海外だとそういう曲は、みんなバンバン跳びはねてます。もちろん、歌ってはいるんですけど。リズムに対する、体の反応というのが違う気がしますね。あと声がデカいんで、バラード系の曲は日本だとついつい見入ってしまう感じだと思うんですけど、海外は「ぎゃあああ!」みたいな。そういうところに文化の違いを感じますね。

 ——最後に海外ツアーの意気込みを

 薫:海外ライブでのツアー。ライブでの心構えは変わらないんですけど、まあ、いかに海外のファンを楽しませられるかという気持ちで臨みます。