警視庁新宿署は20日までに、兵庫県伊丹市の自称音楽講師の沢田憲一容疑者(49)を覚醒剤取締法違反(使用)の疑いで逮捕した。逮捕は18日。容疑を認めているという。容疑者はNHK教育テレビ(現・Eテレ)の子供向け番組で「歌のお兄さん」を務めたが、元・歌のお兄さんの覚醒剤による逮捕はこれで2人目。清廉潔白が求められる子供のアイドル経験者は、なぜ覚醒剤に手を出すのか――。

 逮捕容疑は9月上旬~18日までに、兵庫県、大阪府または東京都内のいずれかの場所で覚醒剤を使用した疑い。新宿署によると「18日午後に歌舞伎町にあるサウナで使用した」と容疑を認め「大阪で覚醒剤を買った」とも供述しているという。

 18日午後6時15分ごろ、新宿区歌舞伎町でパトカーを見つけると、逃げようとした。警察が職務質問したところ、尿から覚醒剤の陽性反応が出たため逮捕。使用済みの注射器2本も所持していたという。

 18日午前に仕事のため上京して、仕事を終えた午後に歌舞伎町のサウナで覚醒剤を使用したと話しているという。

 所属事務所のホームページによると、沢田容疑者はNHK教育「うたってワクワク」で、歌のお兄さんとして1996年から3年間出演していた。他にもNHK朝の連続テレビ小説「ええにょぼ」(93年)などにも出演した。

 NHKの歌のお兄さんが覚醒剤で逮捕されるのは2人目だ。

 NHK教育の「おかあさんといっしょ」で、99~2003年にかけて歌のお兄さんを務めた歌手の杉田あきひろ(53)も2016年に覚醒剤取締法違反(所持・使用)の罪で有罪判決を受けている。ネット上では「歌のお兄さん」ではなく「打ったのお兄さん」などとやゆされた。

 番組関係者は「また逮捕者が出てしまった」と肩を落とすも、「出演者に厳しくしすぎているところがある」とも語る。「歌のお兄さん・お姉さん」「体操のお兄さん・お姉さん」はオーディションによって選ばれる。狭き門をくぐり抜け、お茶の間の人気者になるが、行動はかなりの制約を受ける。

「子供のいる家庭で見られる番組ということもあり、出演者には品行方正を厳しく求めます」(前同)というように「恋愛禁止」「運転禁止」「繁華街への出入り禁止」などリスクにつながりそうな行動のほとんどを制限される“NHKルール”があった。

「駅からNHKまでマスクをつけて帽子をかぶってひっそりと通うんです。あの爽やかなイメージと違って、スタジオの外の生活は世捨て人みたいですよ。ただ、恋愛するなと言われても、健康的な肉体を持つ成人ですから無理がある。他人とは恋愛がダメ、となれば…。過去には出演者同士が付き合っていたこともある。これは制作側も黙認していました」(同)

 つらいのが「他局への出演禁止」と「バイト禁止」だという。「そのわりに、お兄さんたちのギャラってスズメの涙程度」なんだとか。

 そのためか、番組を卒業した瞬間に羽を伸ばしまくる。「元・歌のお兄さん」の肩書があれば、仕事が全国から舞い込んでくるのだ。

「これまで清純・清貧を貫いてきたのに、いきなり楽しいことを全部解禁されて、お金も入ってくるようになる。それで悪い道に進む者がいてもおかしくない。はいだしょうこちゃん(元・歌のお姉さん)みたいに純粋な子じゃなきゃ、この仕事は務まらないよ」(同)

 さすがに、元出演者から覚醒剤の逮捕者が2人も出たとあれば、体制の切り替えが必要な時期かもしれない。

「今の出演者を縛ることはやめた方がいいかもしれませんね。恋愛禁止は解除してあげようか…」と同関係者は話している。

 がんじがらめの生活を送らされるゆえに、その反動が出やすい、ということなのか。