中国のトップ女優ファン・ビンビン(范冰冰=37)が5月末ごろから消息不明になっていることから、出演が決まっていた注目のハリウッド映画「355(原題)」の製作が行き詰まっている。

 同作はサスペンスたっぷりのスパイ映画になる予定で、「X-MEN」シリーズのサイモン・キンバーグ監督(45)がメガホンを取る。製作発表では、登場する5人の女性スパイの国際色あふれる豪華なキャスティングが話題を集めた。

 その中心は「ゼロ・ダーク・サーティ」(2012年)でゴールデン・グローブ賞主演女優賞に輝いた米国のジェシカ・チャステイン(41)。スペインからは「それでも恋するバルセロナ」(08年)で米アカデミー賞助演女優賞のペネロペ・クルス(44)。フランスは「エディット・ピアフ~愛の讃歌~」(07年)で米アカデミー賞主演女優賞のマリオン・コティヤール(42)。また、メキシコ生まれでケニア育ちのルピタ・ニョンゴ(35)は「それでも夜は明ける」(13年)で同助演女優賞を獲得している。

 そこにアジアを代表するファンが共演するはずだった。ところが5月のカンヌ国際映画祭に出席したのを最後に公の場から姿を消した。資産500億円といわれる中国のトップ女優に“二重帳簿”の脱税疑惑が持ち上がった直後の失踪に、当局による自宅軟禁説もささやかれている。中国の習近平政権では、拡大する貧富の差による大衆の不満を抑えるため、13年から「トラ(高級官僚)もハエ(下級役人)も叩く」という腐敗撲滅運動を展開。これまで中国全土で152万人が処分されている。その対象が映画界にも向けられ、ぜいたくの限りを尽くした生活でも知られるファンが“いけにえ”になったのではとみられている。

 ハリウッドの芸能サイト「デッドライン」は、「355」からのファンの降板はほぼ確実と報道。後任には「SAYURI」(05年)の中国人女優チャン・ツィイー(39)が有力視されているそうだが、ファンの消息がはっきりするまで、製作は止まったままだ。