今年7月のサッカー・ロシアW杯の決勝戦(フランス×クロアチア)に乱入したロシアのパンクバンド「プッシー・ライオット」のメンバーが何者かに毒を盛られ、重体となった。プーチン大統領に敵対する政治家やジャーナリスト、元スパイの暗殺が横行している中、同じ手口なのか?

 重体となっているのは同バンドのメンバーで、カナダ人のピョートル・ベルジロフ氏。11日に視力の異常を訴えた後、話すこともできなくなり、病院に運ばれた際には意識不明だった。神経に影響する薬物を摂取したとみられる。

 同バンドは2012年にプーチン政権への反対活動で、メンバーの一部が逮捕された。その後も果敢にプーチン批判を繰り返し、W杯決勝戦では警察官に扮して、4人がピッチに乱入。メンバーは15日間勾留され、3年間のスポーツ大会への出禁処分となった。

 反プーチン勢力を巡っては、元情報将校や政治家が次々と暗殺され、今年3月には英国で元情報将校と娘が神経剤で重体となる事件が起きた。

 ロシア事情に詳しいジャーナリストの常岡浩介氏は「プーチンに批判的な人物が暗殺される特徴として、神経剤ノビチョクや放射性物質ポロニウム210など、国家規模でないと扱えない毒物が使われる。この種の毒物は情報組織の末端が判断して使うのは組織構造的にあり得ず、プーチン大統領が介在していると米英当局はみている」と指摘する。

 同バンドのメンバーは、状況から政権側に狙われたと訴えている。

「今回、何の神経剤が使われたかが、一つの判断材料になる。ただ、国外で起きた事件ならば、警察当局が徹底的に調べるが、ロシア内での事件で、警察もグルなので、肝心な情報は何も出てこないでしょう」(常岡氏)

 仮に容疑者が出てきてもマフィアの身代わり要員で、プーチン大統領の関与に行き着く可能性はほぼないという。