海の人気者たちは大丈夫なの!? 今年1月に閉館した水族館「犬吠埼マリンパーク」(千葉県銚子市)が、現在も1頭のイルカと46羽のペンギンを飼育している。このままではイルカやペンギンが衰弱しかねないと引き取り希望者も現れる中、水族館側は外部との接触を避けている。この“謎の赤字飼育”に、さまざまな臆測が飛び交うが――。

 この数日、世間で話題になっているのが犬吠埼マリンパークだ。太平洋を望む犬吠埼の景勝地に立つ水族館で、1954年に開館。長らく銚子の観光スポットとして名をはせていたが、東日本大震災の風評被害で客足が鈍り、老朽化も相まって、1月をもって閉館に追い込まれた。

 ところが、閉館から8か月たった今も水族館には、イルカのハニー(雌)と46羽のフンボルトペンギン、約40種の魚や爬虫類など500匹が飼育され、明らかにイルカが弱っていることからSNS上で問題となっていた。

 この問題を当初から取材している動物ジャーナリストの佐藤栄記氏はこう話す。

「閉館が決まった直後からイルカのプールは濁っていて、劣悪な環境にあるのがすぐに分かった。GW明けには、後頭部にムチで打たれたような長い傷が10本くらい入っていて、これは尋常じゃないと保健所に相談しました。イルカは群れで生活する生き物で、ストレスから潜ったり泳いだりしなくなって、プカプカ浮いて頭が水面に出ている状態になったことで、ヒビ割れしたんじゃないかとみられています」

 不可解なのはイルカやペンギンを手放さずに飼育を続けていることだ。

 閉館が決まった当初、水族館側はイルカやペンギン、魚・爬虫類など2500匹を譲渡すると発表。イルカは鴨川シーワールド(千葉県鴨川市)、ペンギンはJAZA(日本動物園水族館協会)が引き取る準備を進めていたという。ところが、閉館から数か月たって、水族館側との譲渡の話は、没交渉になってしまった。

 現在、イルカやペンギンは4~5人の飼育員がエサやりや清掃などを続けているが、飼育には莫大なカネがかかる。エサ代で月100万円、光熱費で月200万~300万円はかかっているとみられ、飼育員の人件費も含めれば、月500万円は下らない。

「そもそも水族館は1月29日に突如、閉館を発表し、2日後に閉めてしまった。知名度はあるので、“さよならキャンペーン”でもやれば、懐かしんで多くのファンも訪れた。もし売るとしても、イルカは1頭300万~400万円、ペンギンも1羽50万円はします。人気があるので、すぐに他の水族館に引き渡されると思ったら、キープされたまま。一刻も早く手放したいハズなのにどこかスポンサーがついて、水族館を再建するつもりなんでしょうか」(佐藤氏)

 とはいえ、再建するにしても建物は老朽化が進み、プールは10メートル×20メートルと手狭。仮に改装となっても工事期間とランニングコストを考慮すれば、イルカやペンギンは1回手放した方がはるかに安上がりになる。それとも余命短いイルカを案じ、水族館側が最後までみとるとでもいうのか。

 この問題はSNSで話題になったことで、淡島ホテル(静岡県沼津市)が引き取りを表明するなど、支援の輪も広がっているが、水族館側は意思表示を示すどころか“音信不通”になっている。

「もし引き取り先が決まったとしてもイルカは輸送に耐えられるかどうかが心配な状態。海ガメも閉館直後に死んでしまったそうです。水族館側はもっとオープンにしてくれればいいが、こちらが『イルカは元気ですか?』と問いかけても口を閉ざしている状態です」(佐藤氏)

 民間企業の問題で、行政側も強制介入することはできずに手をこまねいている。イルカやペンギンとともに“籠城”してしまったともいえる水族館。この先、どうなってしまうのか?