将棋の最年少棋士・藤井聡太六段(15)が18日、大阪市の関西将棋会館で指された第31期竜王戦5組ランキング戦準決勝で、船江恒平六段(31)との対局に臨み、72手で勝利した。昨年、6組で優勝し5組に昇級していた藤井六段は、この勝利で規定を満たし、七段昇段を果たした。15歳9か月、プロ入り後1年7か月での七段昇段は、加藤一二三・九段(78)が持っていた記録を破る最年少・最速となった。次々と記録を塗り替える中で、“転売ヤー”のエジキにもなっている。

 対戦相手の船江六段は井上慶太九段(54)の弟子。藤井六段は中学生最後となった対局で井上九段に敗れている。また、井上一門の菅井竜也王位(26)、稲葉陽八段(29)にも敗れており、一門との対戦成績は3戦全敗。ちまたでは“藤井キラー”ともささやかれていた。

 そんな鬼門ともいえる船江六段との対局に、藤井六段は「意識しても仕方がないし、そういうのはなかった」と話したが、記録係の場所に足を運びタブレットをのぞき込む場面も。ネット上では“ひふみんアイ”ならぬ“タブレットアイ”と盛り上がった。

 史上最年長でプロ棋士になった今泉健司四段(44)は「たまたま対戦相手の巡り合わせです。井上先生の一門が、いずれも実力者だったというだけ」と指摘。七段昇段には「いまさら僕が言うのはおこがましい」と前置きした上で「前から言っているように一流の棋士で、早くタイトル戦が見たいですよ。野球の大谷(翔平)君ももはや誰もが認める存在ですが同じことです」と七段昇段は通り道と言わんばかりだ。

 それにしても、2月に六段に昇段してからわずか3か月で七段に昇段とハイペース。4月には偽のサイン色紙を売ったとして逮捕者も出るほど、昇段に伴って藤井グッズの価値も高まっている。

 五段は2週間であっさり“卒業”したため、公式グッズの発売はなかったが、ファンへのプレゼントとして贈られた“五段”のサインが入った色紙はたった3枚といわれている。

 16日には「専心」の揮毫(きごう)とともに「六段 藤井聡太」の名前が入った将棋連盟公式グッズの扇子(定価2160円)がインターネットで発売(3日に関西将棋会館などでも発売)されたが、あっという間に売り切れた。販売に際しては「転売用目的によるご購入はご遠慮ください」との注意書きも添えられたが、オークションサイトでは早速、転売とおぼしき20倍近い高額での出品が相次いだ。

 転売事情に詳しい関係者は「転売ヤーは限定品や人気が見込める商品を根こそぎ買い占める。中国人が大挙参入し、競争が激化している。藤井人気があるからこそですが、純粋に応援しているファンにとっては困りものでしかない」と指摘する。

 将棋連盟関係者は「現状では、注意書き以外の具体的な対策は取れていません。本当はもっと作れればいいんですが、材料の竹が確保できなくて、大量生産できないんです。プリントの方はどうとでもなるんですが…せっかくの稼ぎ時なんですけどね」と明かした。

 周囲の過熱ぶりをよそに藤井本人は「これからさらに実績を積み重ねることが大切かな」と棋力向上に余念がない。八段昇段の最短条件である竜王位の獲得も夢物語ではなく、そうなれば七段とも年内でお別れとなり、グッズもさらにプレミアム化する。まだまだ藤井フィーバーが続きそうだ。