大野雄二氏が明かす「ルパン三世」楽曲秘話“僕は子どもに忖度しない”

2018年05月12日 11時00分

大野雄二氏

 特に40代、50代が大好きなアニメに「ルパン三世」シリーズがある。その「PART2」(1977~80年)から音楽を手がけ続けているのが、ジャズピアニストにして作曲家の大野雄二氏(76)だ。最新作「ルパン三世 PART5」(日本テレビ系)でも音楽を担当している大野氏に、40年以上の長い付き合いになるルパン三世との“思い出”を聞いた。

 ――初めて「ルパン三世 PART2」のテーマ曲を作った時のことは覚えていますか

 大野氏:77年ごろの僕はCMの作曲を嫌というほどやっていて、聴く人のくすぐり方も身につけていた。そんなちょうどいい時期に話がきたんだ。当時は単なるアニメの一作品として受けただけだから、曲ができた時のことはあまり覚えてないんだけど、使うスタジオが良くなっていったのは覚えてる。

 ――スタジオですか

 大野氏:オンエア前の録音に使ったのは、赤坂のうなぎの寝床みたいなスタジオでね。オンエアが始まって1か月半ほどして、追加の録音をする時にはもっといいスタジオを使えるようになった。「PART1」(71年10月~72年3月、全23話)よりも「2」の視聴率が良かったんだろうね。

 ――内容もテーマ曲も、いわゆる“子供向け”ではありませんでした

 大野氏:「2」を始めるに当たって制作する日テレは徹底的に「1」を分析して、ダーティーなイメージからお茶の間でも人気が出る愛嬌のある顔にし、ちょっとスケベでおっちょこちょいなキャラに修正したんだ。で、音楽は僕の好きに作らせてくれた。なぜかというと、僕は日テレでずっと石立鉄男さん主演のドラマの音楽をやっていて、そのプロデューサーだった吉川斌さんがルパンの担当になったから。7年ほど一緒にやってたから、信用してくれて「好きにやっていいよ」と言ってくれたんだ。

 ――他のアニソンとは違う大人っぽい曲でした

 大野氏:あのころはアニメソングを作る人が子供に忖度してたんだよ。子供だから難しいのは歌えない、わからないと、大人が考える子供像に合わせて作っていた。だから、悪いけれど、単純なものしかなかった。僕は「子供だから」という曲の作り方はしたくなかったんだ。むしろ小さい子供は聴かなくていい、小学校高学年の子が背伸びをして聴いてくれるぐらいの曲にしようと思った。ルパンの内容に合わせて作ったというのもあるけど、77年10月に「2」がスタートして、翌年1月ごろに「大学生が見ている」という話を聞いて、やった!と思ったよ。

 ――オープニング曲は途中からボーカルバージョンになりました

 大野氏:放送半年で新しいシングルを出そう、歌を入れようとなってね。それは無理だと言ったんだよ。この曲はインストゥルメンタルとして作ったから、音域が2オクターブぐらいあって、人が歌うには広すぎるんだ。こんな歌を作るなんてバカかと思われちゃうから、嫌だと言ったんだけど(笑い)。だからピートマック・ジュニアはよく歌ったと思うよ。「男には」の後、「自分の世界がある」が出なくて苦労していたけど、なんとか頑張って歌っていたよ。

 ――カラオケで入れると危険ですね

 大野氏:元のキーのままでは歌えないと思う。カバーCDを出してる人も、オクターブ下げてる人が多い。オリジナルのまま歌ってるのはEGO―WRAPPI’Nの中納良恵ぐらいかな。よっちゃんは圧倒的にうまくて、あまりに余裕で歌うから、悔しかったぐらい(笑い)。

 ――ルパンの最新作「5」はフランスが舞台ということで、サントラの曲もフランスっぽく

 大野氏:前作はイタリアが舞台で、ローマよりもベニス、ゴンドラ、マンドリンというイメージ。フレンチといえば、シャンソン、アコーディオン、パリというイメージでしょ。聴く人が持っているイメージに合わせて曲を作り、フレンチだからあざとくアコーディオンを出しているんだ。うっすらじゃなく、あざとくね。これはCMを作っている時に嫌というほど教わったこと。それから演奏しているのは日本一のミュージシャンばかりで、僕が全員指名して声をかけたんだ。

 ――それを知った上でサントラを聴くと味わい深いですね

 大野氏:ルパンのサントラきっかけで本格的にジャズファンになる人もいる。僕の作る曲には、意図しなくてもジャズのテイストが出ているからね。

 ――ジャズは難しいイメージですが…

 大野氏:僕は今、ルパンの曲を演奏する「Lupintic Six」というバンドと、ドラム、ウッドベースと一緒にジャズがモロに出る「大野雄二トリオ」をやっていて、トリオのライブに来たお客さんはジャズにはまるんだ。僕のジャズは入門編で、初めて聴く人にも優しいと思うよ。

★おおの・ゆうじ=1941年生まれ。静岡県出身。小学校でピアノを始め、高校時代にジャズを独学で学ぶ。慶応大学在学中に名門ビッグバンドに所属し、卒業後にジャズピアニストとしてプロデビュー。作曲家としてCM音楽や映画「犬神家の一族」「人間の証明」などの音楽も手がけた。「ルパン三世 PART5」オリジナルサウンドトラック「LUPIN THE THIRD PART V~SI BON! SI BON!」「THE OTHER SIDE OF LUPIN THE THIRD PART V~FRENCH」が9日に発売