南北アメリカ大陸の吸血UMAと言えば「チュパカブラ」、ヨーロッパで吸血鬼と言えば「ドラキュラ」だが、アジアにはこの「アスワング」がいる。

 アスワングとはフィリピンに伝わる女吸血鬼で、今でも人々に恐れられている伝承の中の存在だ。主にフィリピン南西部のパラワン島に出没するとされている。パラワン島は熱帯雨林で密林が多く、フィリピンの中でも秘境と言われている土地だ。

 アスワングは日が出ている間は美しい女性の姿をしているのだが、夜になると豹変する。空を飛び回り、人の生き血をすする化け物になるのだ。

 その食事方法も不気味だ。民家の隙間や割れ目から長い舌を入れてターゲットの血を吸う。食事が終わると、まるで妊婦のように腹が膨れ上がるのだそうだ。

 2004年にはフィリピン南部で農家の息子の少年2人が田んぼの作業部屋に泊まりこんでいたところを襲われたというニュースもあった。犬のような見た目だったという話だが、少年たちは「アスワングだと思った」と語る。

 アスワングの見た目は恐ろしく、体全体は毛深く、背中に翼が生え、爪は鋭い。また、前述の通り、かなり長い舌も持っている。大きさはだいたい1・5〜1・8メートルと言われ、二足歩行もするので人間とさして変わらない。昼間の姿との落差は相当大きい。怪物の姿になると「キキーッ」と鳴くそうだ。ただ、この容姿と特徴、何かに似ていないだろうか。

 そう、コウモリである。フィリピンには多くのコウモリが生息し、かつては食用コウモリもいた。また、致死率100%と言われる狂犬病を持ったコウモリが、森林破壊によって人里に出て脅威となっている。フィリピンの人びとにとって、よくも悪くもコウモリの存在は大きい。

 こういったコウモリとの関係からアスワングの伝承は生まれたのではないだろうか。アスワングに影をなめられると、その人は死に至るという話も残っており、伝染病とリンクする。

 フィリピンには大型のコウモリが数十種類もいて、体重を基準にした場合、世界でもっとも大きいコウモリもフィリピンのものだ。他の飛行する生物と比べてコウモリは哺乳類のため、人間に近い形をしているというのもよく分かる。また、アスワング自体がコウモリを捕食することもあるそうだ。

近年はアスワングらしき存在が映像に収められたこともあるらしく、これからの真相解明が期待できる。

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