先日、東スポの1面に衝撃写真が掲載されて話題になった。そう、鹿児島県の屋久島で「カッパ」の写真が撮影されたのである。

 カッパといえば知らない人はいないほど有名な、日本を代表する妖怪であり、UMAである。

 UMAとしてもっともポピュラーな存在で、漫画などの創作物でも多数取り扱われており、なじみのある人がほとんどではないだろうか。

 その分かりやすい見た目の特徴も人気の秘訣かもしれない。爬虫類のような緑色の肌と指の間に張られた水かき、背中には亀のような甲羅、黄色く短いクチバシ、頭頂部には濡れた皿がある。この皿の水分がなくなると死ぬと言われている。より爬虫類に近いもの、体毛が生えているもの、差異はあるが大まかなイメージはこのような結果になるだろう。

 生息地は川や沼地で、見た目からも推測できるように泳ぐことが得意である。

 自分の体色と同じ緑色のキュウリを好物としているのも広く知られていて、キュウリののり巻きをカッパ巻きと呼ぶまでに浸透している。

 妖怪としては悪さをしない存在だと言われる一方で、イタズラ好きとの説もあり、たまたま通りかかっただけの人を水の中に引きずり込み命を奪う恐ろしい側面もあるのだ。

 なぜ、そのような凶暴なことをするのだろうか。

 人間の尻から「尻子玉」と言われる玉を抜き出すのがカッパの目的だ。

 手段は溺れさせるだけでなく、カッパは相撲が好きなため、子供に相撲を仕掛けて、勝つと尻子玉を抜くということもある。

 カッパとの相撲の必勝法として有名なのが、戦う前にお辞儀をしてカッパの皿の水をこぼさせて弱体化するものだ。

 このカッパは実に日本全土で目撃談がある。

 カッパの名所として有名なのは岩手県の遠野市で、いかにもカッパがすめそうなほど水のすんだ小川の流れるカッパ淵がある。カッパ淵のある常堅寺にはカッパの狛犬があり、淵にはカッパを祭ったほこらもある。何より、民俗学者である柳田国男が著書「遠野物語」でカッパの伝承について記した地なのだ。

 茨城県の牛久沼、こちらは日本画家の小川芋銭によって“河童の地”であることが広く知れ渡った。牛久沼には古くよりカッパがすんでいたとされ、いくつもの逸話が残っている。

 悪さをするカッパを懲らしめたら村人たちの手伝いをするようになった話、カッパの手を拾った医者の話などなど、牛久市にはカッパの碑があり、カッパ祭りも行われる。

 森高千里の歌「渡良瀬橋」で有名な群馬県の渡良瀬川の水沼駅。ここにも“釜が淵の河童伝説”があり、カッパが食器を貸してくれていたのだが、ある日、食器を壊したまま黙って返した者がいて、それ以来、貸してくれなくなったのだそうだ。

 広島県の東広島市にある、どんどん淵峡には河童神社があり、付近にはたくさんのカッパのオブジェが配置してある。

 日本の西部ではカッパを「エンコウ」と呼ぶ地域があり、広島県にはズバリ、猿猴川という川がある。

 そして、カッパ伝説がどこよりも多いのが九州地方なのだ。今回、カッパが撮影された鹿児島県ではカッパは「がらっぱ」と呼ばれ「ひょんひょん」と鳴きながら空を飛ぶとも言われてきた。

 これは水辺に集まる鳥の鳴き声から生まれた伝承ではないかと推測できる。

 この写真が撮影されたのは龍神伝説の残る大川の滝で、龍神は水神とされ、カッパはその眷属(配下)であるため、この場所でカッパが目撃されたのは意味深である。

 それにしてもこのカッパ、スマホを持ったようにも見え、愛嬌がある。

 このようなユニークさとかわいらしさを併せ持つところが、カッパが日本人のみならず世界で愛される妖怪となっている要因かもしれない。

 広く長く親しまれながらも正体はようとして分からないカッパだが、屋久島では平成以降も目撃例が多く、屋久島も含まれる大隅諸島にはカッパの伝説が数多くあるのだ。

 これからも九州でのカッパ情報から目が離せないのは確かである。